『ペンディングトレイン』山田裕貴と赤楚衛二が築き上げた男の友情劇

取得元:https://plus.tver.jp/news/140063/detail/

いつか彼らが元の世界に帰る日が来るとしたら、それは待っている人たちのためだと思っていた。

だが、違った。

『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』第8話で描かれたのは、このドラマが電車を舞台にした意味そのものだった。

直哉の心を揺り動かしたのは、弟ではなく、優斗だった



電車とは、赤の他人が密着する空間。その場の特殊性がこのドラマが生まれるきっかけになったとプロデューサーの宮﨑真佐子は語っていた。

年齢も生活環境も違う。会話を交わすことはほとんどない。でも、電車に乗っているときだけ肌を寄せ合う。特に通勤通学の時間ならなおさらだ。人によっては、名前も知らないけど、毎日同じ電車の同じ車両に乗っている馴染みの人として、顔だけ記憶していることもあるかもしれない。

そんな他人同士が、同じ電車に乗っていたというだけで、一緒にサバイバル生活を送ることになる。そこで生まれる不思議な絆が、『ペンディングトレイン』の見どころのひとつだ。

ワームホールの発見により、元の世界に戻る糸口を白浜優斗(赤楚衛二)たちは見つける。だが、萱島直哉(山田裕貴)が自分はこの世界に残ると言い出す。本当にこのまま直哉はひとりの道を選ぶのか。「ぼっち得意なのよ」と自嘲する直哉があまりにも空笑いで、胸がちぎられそうになる。

そんな直哉の心を変えたのは、優斗だった。

「萱島さんを助けられなかったら、きっと俺は一生後悔する」

その澄んだ目を潤ませて、優斗は熱弁する、一緒に過ごした日々のことを。何度も対立しながら、それでも一緒に困難を乗り越えてきた。直哉が背を向けそうになったら、力づくで優斗が腕を引っ張り、優斗が苦しんでいるときは直哉が皮肉まじりの発破で力づけてきた。もう他人なんかじゃない。ただ8時23分の電車に乗り合わせただけの他人同士だった直哉と優斗は、お互いのいちばん弱いところを見せ合い、分かち合える友となった。

弟のためでもなく、他の誰かのためでもなく、俺のために一緒に戻ってほしい。直哉が元の世界に帰る最後のきっかけになったのは、赤の他人だった優斗。まだ出会って間もない頃、崖から落ちそうになった直哉を優斗が引き上げたように、お節介なくらい真っ向から人にぶつかっていく優斗の言葉だからこそ、ひねくれ屋の直哉に刺さった。


赤の他人が、誰よりも信じられる友となった


そして、その想いが他の乗客たちをも変えていく。

ワームホールが出現し、5号車に異変が生じる。「これが戻る最後の手段です」と優斗は懸命に説得するが、万が一の危険を恐れる一部の乗客たちは動こうとしない。自分の言葉は届かないのか。優斗が肩を落とした瞬間、声を上げたのは直哉だった。

「こいつを信じろ!」

それは、変電所の前で優斗に言われた「俺を信じろ」という言葉に対する、直哉のアンサーでもあった。誰も信じることのできなかった直哉が、裏切られることを誰より恐れていた直哉が、信じた人。信じたいと、信じられると願った人。それが、いちばん反目していた、水と油の優斗。

『ペンディングトレイン』は、わかり合えないと思っていた他人同士が友になるまでを描いたドラマだった。それを持っている雰囲気も、演技の質感もまるで違う山田と赤楚という2人の役者が演じることで、熱さと不器用さが入り混じり、いとおしさが増した。

宮﨑プロデューサーのインタビューによると、山本俊介(萩原聖人)が直哉のことを「いちばん弱いやつ」と言ったとき、優斗が「やめろ」と止めに入ったのは、赤楚のアドリブだと言う。きっとそこには、優斗だったらこのときどうするだろうという演じる俳優だからこその視点があったのだろう。それほど優斗にとっての直哉も、直哉にとっての優斗も大事な存在になっている。その友情が形になった瞬間のようで、改めて思い出すと熱いものがこみ上げてくる。

個人的には直哉が優斗のことを「白浜」と呼び捨てで呼ぶところに、今までにない信頼を感じてグッと来た。そういった呼び名の変化からお互いの距離感を感じることができるのは、3か月という長い時間をかけて物語を追える連ドラならではの醍醐味だろう。

だが一方で、「尊敬しかないです」と慕う畑野紗枝(上白石萌歌)を「尊敬だけ?」と意味深に見つめ返すなど、優斗の中で紗枝への感情に変化が生まれている様子も描かれていた。直哉のことを考えると、性格的に身を引きそうなタイプに見えるが、前回、樋口真緒(志田彩良)への気持ちに区切りをつけたことで、心境が変わったのだろうか。直哉と優斗の関係性がいいだけに、あまり三角関係は見たくないというのが本音だが、この3人の関係がどういう決着を迎えるかは、最終回までのお楽しみとなりそうだ。

また、米澤大地(藤原丈一郎)と田中弥一(杉本哲太)の間に生まれた親子のような友好関係、そして渡部玲奈(古川琴音)と明石周吾(宮崎秋人)の恋など、メイン3人以外の人間模様も立体的になってきた。それだけに、まさか最後に田中が身を張って直哉を救い、ひとりこの世界に残るというのは驚きの展開だった。もともとオープニングタイトルで田中の姿だけないことが注目されていたが、本当にこのまま田中は元の世界に戻ることはないのだろうか。また、同じように多くの人が取り残されたであろう6号車の行方も気になる。

ワームホールに吸い込まれ、舞台は一気に2026年へ。次回予告を確認すると、どうやら直哉の身に異変が生じるようだ。きっとワームホールから発生した黒い霧にふれてしまったせいだろう。まるで人が変わったように暗い目をした直哉の胸ぐらを優斗が掴むなど、これまで築き上げた関係が崩れ落ちてしまうような予感が漂っている。

直哉たちははたして本当に隕石衝突を回避できるのか。いよいよ『ペンディングトレイン』の最終章が動き出そうとしている。

関連リンク
【動画】『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』の最新回を視聴する

【動画】『ペンディングトレインー8時23分、明日 君と』

山田裕貴“直哉”らの乗った電車が未来へワープ!?『ペンディングトレイン』1話~3話ダイジェストTVerで配信中

消えた電車の行き先は、希望か絶望か?『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』が出発進行!

『波よ聞いてくれ』小芝風花“ミナレ”、セーラー服姿で男を投げ飛ばす!「かっこよすぎる」「キレキレ」【ネタバレあり】

福山雅治“皆実”、容疑者として浮上した女性に好意!?

『弁護士ソドム』福士蒼汰​​“渉”、山下美月“天音”​​ら仲間たちの思いに涙「絆深すぎる」【ネタバレあり】

 

関連記事: