『パリピ孔明』向井理“孔明”の鮮やかすぎる総仕上げ 向井の泣き顔と涙に心奪われる最終回

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いい意味で裏切られた。流した涙が最後に引っ込む見事な演出が光った『パリピ孔明』(フジテレビ系、毎週水曜22:00~)最終話。

突如、諸葛孔明(向井理)が現代の渋谷に転生したあの夜、彼が見出した現世での使命は見事果たされた。しがないアマチュアシンガーだった月見英子(上白石萌歌)を君主に選んだ天才軍師の目にやはり狂いはなかった。

チーム英子の団結力をラスボスのスーパースター・前園ケイジ(関口メンディー/EXILE・GENERATIONS)も侮っていたようだ。完全に自分たち側に寝返らせたと安心しきっていたKABE太人(宮世琉弥)は決して魂を売り渡してなどいなかった。前園の差し金で会場到着を目指す英子の元には様々な邪魔が入り、出番に間に合わない。そのステージの穴埋めとして急遽開催された前園とKABEの即興ラップバトルで、KABEはあまりに自然に前園の正体を暴露する。前園の裏にはゴーストライターとして搾取され続けているイースト・サウスの存在がいることをアップテンポなリズムに乗せて観客にぶちまけるKABEの姿が痛快だ。そもそもラップバトルには“下剋上”のような意味合いがあるかと思うが、まさにそれが機能していた。

最終的にお金の力だけでは人の心は繋ぎ止められない。イースト・サウスの東山(石崎ひゅーい)と南房(休日課長/ゲスの極み乙女。)の2人は孔明からの説得と英子の新曲「Time Capsule」によって、自分たちの青春を裏切り続けることをついに辞めた。純粋に夢を追いかけていたあの日々まで嘘にはしたくない、なかったことにしたくなかったのだろう。そして活動休止していた自分たちのことを今も変わらず“憧れのヒーロー”だと迷わず言ってくれた英子のために自らステージに立ち、前園の身代わりとして操り人形に甘んじていた自分たちのこれまでに終止符を打った。ステージ上のイースト・サウスの2人は全く錆び付いておらずブランクを感じさせない。あまりに爽やかで軽やかな“東南の風”を優しく吹かせる。そこには憎しみや復讐などが寄り付く隙もなく、ただただ自分たちの音楽をありのままかき鳴らせる喜びだけが全身から滲み出ていた。

孔明が前園に説く「命を燃やすこと」と「才能の正体」

その後の、前園の転落ぶりは絵に描いたような急転直下を辿る。全てがフェイクだったことが白日の下に晒され大炎上。頼みの綱だった父親にも見放され、さらには顎でこき使ってきたマネージャーにもついに愛想を尽かされてしまう。

「全てを失った、もう終わりだ」とこぼす前園に、孔明はすかさず言う。「あなたはまだ生きています。全て失ってなどいない」と。「言いたいことも言えず、戦場で死んでいった命をたくさん見てきました。率直な意見、率直な感想は生きているうちに語ってこそ」とかつて英子に話していた孔明の言葉が思い出される。そして、「学ばなければ才能を高めることができず、志がなければ学ぶことができない、これで終わりではありません。これからです」と孔明は自身の名言を持ってして前園に諭した。これもまた第1話で自分には才能がないと嘆いていた英子に孔明が掛けた言葉「才能とは学習の結果、身に付くものだと考えております」を受けているのだろう。

なかなか日の目を見なかったのは英子も同じだが、彼女と前園の分かれ目になったのはこの“志”だろう。自分を見下した相手への復讐にばかり躍起になり他人の才能をそっくりそのまま買い取るという禁じ手に出た瞬間、前園の成長はそこで完全に止まってしまったのだ。前園にもお金の力で自分の言いなりになるだけの取り巻きではなく、自身を引き上げてくれるような軍師がいたら少しは違う結果になっていたのかもしれない。ただオーナー・小林(森山未來)からの助言がそうなり得た中、素直に耳を貸せなかった前園の狭量さではそんな存在はそもそも得難かっただろうが……。

前園の化けの皮が剥がされ、さらに英子と憧れの人・マリア・ディーゼル(アヴちゃん/女王蜂)の共演まで実現し、“天下泰平の計”in「サマーソニア」は孔明が思い描いていた以上の成功を収める。夢の中で劉備(ディーン・フジオカ)とついに対面を果たしてしまい現世での孔明の任務は完了したかに思えるほどに。

孔明と英子のこれまでの歩みが凝縮されたラストシーンの演出が憎すぎる 待ち受ける泣き笑いのまさかの結末

ずっとずっと思っていたけれど英子はやっぱりちょっぴりズルい。孔明や小林、KABEらにいつだって守られ、とにかく「サマーソニア」出演にだけひたすら集中できる環境を与えられ、本当のところは知らされていない。裏事情などは彼女だけには共有されていないのだ。それでも皆が彼女のその真っ直ぐ澄んだ思いを必死で守りたくなってしまう気持ちもわかる。あんなに何のプライドも衒いもなく、感情と言葉が直結している人は本当に珍しい。彼女からの「ありがとう」のたった一言と笑顔で全ての苦労が報われてしまう、それこそが彼女が持つ天賦の才だろう。

英子の才能と今世での自身の役目を見出したあの夜と同じようにBBラウンジで彼女の歌声に耳を傾け酔いしれる孔明。2人きりだったところにどんどん観客が増えてくる。孔明によってもたらされた縁ある人たちが割って入り、その分だけ孔明と英子の距離は遠ざかる。あの夜は彼女の歌声に夢中になっていたのはたった一人・孔明だけだったところから、今や会場にいる皆が英子の歌に熱中している。この光景こそ孔明が望んでいたものに他ならないはずなのに、嬉しいのはもちろん、反面込み上げる寂しさを否めない。“もう私がいなくても大丈夫”と認めざるを得ないような状況が揃ってしまった。孔明が英子に残したものの大きさが際立つ分、英子と孔明双方に巣立ちの時が近いことが突きつけられているかのようだ。

そうとは知らず孔明のことを親から離れてしまった迷子の子どものように探し回る英子の姿に、こちらもいよいよ別れの時を覚悟するも……。こんなラストが待ち受けていたなんて誰が予想できただろう。泣き笑いのラストこそ皆の願いが通じた“天下泰平”で最高だ。

文:佳香(かこ)

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