こんニャに芸達者!ハリウッドも魅了した猫アクターたち【猫の日企画】 – 海外ドラマ

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明日2月22日は「猫の日」ということで、映画やドラマで活躍する猫アクターたちをご紹介したい。「猫は犬ほど賢くないから演技ができない」といった類の言葉を耳にすることがあるが、実際は「猫は演技するなんてバカバカしいと思うほど賢いから、演技をしない」が正解ではないかと思えるほど、多くの猫たちが名演を披露してきた。そうした名演が生まれた背景や、その裏にあった心温まるエピソードも含めてお伝えしよう。

オランジェイ(『ティファニーで朝食を』のキティ役)

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猫アクターで最も有名なのはこのオランジェイと言えるだろう。『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーン演じる主人公のホリーのもとを時々訪れるキティ(猫ちゃん)を演じた彼は、1950年代から1960年代にかけて10年以上活躍した大ベテラン。本作ではベッドで寝てるホリーの背中に乗って起きるようせがんだり、雨の中ホリーに捨てられかけ、一度は姿を消すもののひょっこり現れるといった絶妙な演技で称賛された。

スター猫のオランジェイは、映画デビュー作となった1951年の映画『Rhubarb(原題)』でほかの13匹の猫と一緒に主人公のルバーブを演じたことをきっかけに、『縮みゆく人間』『ジゴ』『アンネの日記』『ヒッチコック劇場』『スパイ大作戦』『バットマン』など10本以上の映画やドラマに出演し、印象深い演技を披露。動物界のアカデミー賞と言われるPATSYアワードを2度受賞した唯一の猫でもある。なお、彼を育てたフランク・インは有名なトレーナーで、自身が指導した動物たちに40ものPATSYアワードをもたらした。

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オランジェイが特に得意だったのは、何時間もじっとしていること。とはいえ、時にはいつの間にか姿を消してしまい、スタッフが探し回る羽目になったんだとか。また、共演相手の人間(オードリーも?)を引っかいたり噛んだりすることが珍しくなかったため、一部で「世界で最も意地悪な猫」と呼ばれることもあった。


ボブ(『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の本人役)

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薬物依存でホームレスとなっていたストリート・ミュージシャンのジェームズが一匹の野良猫ボブと出会って生きる希望とチャンスをもらい、やがて彼らのストーリーは世界中でベストセラーになり映画化もされる...というまるでフィクションのような実話の映画化『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』。本物のボブが本人役で出演しているという珍しい作品だ。高齢なこともあって、バスを追っかけたりといった体力を使うシーンは別の猫が代わりに演じることもあったが、ほとんどのシーン、特にアップの場面はすべてボブ自身が演じている。

かつてボブ自身がやったことを描いているとはいえ、演技としてやらなければならない上、相棒のジェームズ役は本人でなく俳優であり、カメラマンなど多くの人間がいて何度も同じシーンを撮影することもある特殊な状況にあっても見事な演技を披露。毎日撮影現場に行っていたというジェームズ本人によれば、ボブは「本物のプロ」で、何度テイクを重ねても毎回鳴くべきところできちんと鳴けるなど、最高の演技を見せており「生まれながらのスター」とのこと。ただ、何かあった時のためにスタッフはみんな、ボブの大好物であるクリームチーズのおやつをポケットに常備していたのだとか。

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ジェームズ本人の助けもあって、ボブを肩に乗せて歩いたり自転車に乗せたり一緒に街頭に立ってパフォーマンスしたりと、本物の二人のように振る舞うことができたジェームズ役のルーク・トレッダウェイ。タイトルにある、ボブお得意のハイタッチも二人で披露している。とはいえ苦労することもあったようで、「自分の演技がうまくいっても、彼が不機嫌に見えたらやり直しなんだ。ボブがうまく映っているテイクを使わないといけないからね」と語る。

ちなみに、ボブの名前はドラマ『ツイン・ピークス』のキラー・ボブから名づけられたという。2007年にジェームズと出会って以来ずっと一緒で、撮影現場でジェームズ本人とボブが一緒にいるところを見たキャストのルタ・ゲドミンタス(ベティ役)は、「彼らを見ていると心が温まるし、この仕事の意義を忘れずにいられる」とコメントしている。


ロンドンでの映画プレミアでキャサリン妃とも交流したボブは、ジェームズとともに日本公開に合わせて来日も果たしている。ジャパンプレミアではジェームズがくれたちゅーるにドハマりする姿を披露。乳製品に目がない彼のギャラは、WhiskasのキャットミルクとKRAFTのチーズとのこと。現在は続編『A Gift From Bob(原題)』が製作中で、もちろんボブが再び本人役で出演するという。

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トント(『ハリーとトント』のトント役)

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主人公の一人として堂々とタイトルロールを務め、さらに本作が映画初主演だった相手役にアカデミー賞主演男優賞をもたらした、本物の招き猫と言えるのが『ハリーとトント』でトントを演じたトント。ニューヨークで住んでいた家を失った老人ハリーが、愛猫トントとともに新しい家を探してカリフォルニアまで旅に出るロードムービーで、猫を連れていることでハリーは飛行機に乗れずバスで移動する羽目になったりするが、あくまで一緒にいる姿が温かい感動を誘う名作だ。リードをつけられたトントは非常におとなしく、老いたハリーの速度に合わせて一緒に歩を進める様が微笑ましい。

ハリー役のアート・カーニーは動物を飼ったことがなく猫好きでもなかったがトントとはうまくやれていたそうで、その証拠として、撮影当初は彼の周りに餌を置いてトントを近くにいさせるようにしていたが、撮影が進むにつれて仲良くなり、途中からはそうした小細工なしでも側にいてくれるようになったと語っている。

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「トントはちゃんと訓練されていて、撮影が終わる頃には私を含む全員が彼を引き取りたいと思うようになっていたよ。我々の間にはハリーとトントのように本当の絆が芽生えたんだ。愛する猫として接するうち、彼は餌なしでも私のもとに来てくれるようになった。トントをモーリス(当時有名なCMに出演していた猫)と勘違いする人も多いが、私に言わせればトントの方がもっと可愛いよ」と、"親バカ"発言をするくらいすっかり魅せられていたアート。しかし撮影終了後のトントを買い取りたいという申し出は、残念ながらトレーナーに断られてしまったという。

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主演コンビの一人なだけあって、撮影現場にはハリーとともにトントの名前が書かれた専用の椅子が用意されていた。2匹の代役が用意されていたものの、本人の演技が達者だったので代役の出番はほとんどなし。その名演が認められ、トント自身も前述のPATSYアワードを受賞と、主演の二人そろって栄冠を手にした。


ナチョ、ジェフェなど7匹(『キアヌ』のキアヌ役)

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映画『キアヌ』は、キアヌと名付けられた子猫がトラブルに巻き込まれて誘拐されるものの、その愛らしさゆえに出会う人たちを片っ端から魅了してしまう(強面のドラッグディーラーまで!)というコメディ。その設定通り、猫の可愛さを存分に味わえる作品だが、現場のスタッフやキャストも猫に魅了されていたそうだ。

キアヌを演じるのは、ニューオーリンズで行ったオーディションによって選ばれた、もともとはシェルターにいたナチョ、ジェフェなどの子猫たち。当初は3匹の兄弟でスタートし、撮影が進むうちに彼らが成長してしまったため、新たに4匹が加わる形で合計7匹が起用された。なお、トラ猫である理由は、ハチワレ猫との二択のうち、そのシェルターで最も数が多く柄が合わせやすい上、「カメラ映りがとてもいいし、一緒に仕事しやすい」(監督談)ため。

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生後数週間の子猫たちはもちろん演技経験がない子ばかりなので、撮影に向けて4週間のトレーニングを実施。ブザーを使って誘導し、言われた通りできたらオヤツをあげるということを繰り返すことで、歩いたり決まった場所でじっとしたりする方法を教え込んだ。また、猫たちを撮影前から現場にいさせることで騒々しく大勢の人間がいる環境に慣れさせ、おかげでナチョたちは爆竹のような大きな音がしてもビックリしないようになったのだとか。

技術の進歩によってCGやアニマトロニクスで動物キャラクターを自由に動かせる時代にあって、監督が「何よりも大事なのは可愛さ」と本物の猫を使うことにこだわったため、本編に出てくるのはすべて本物。「本物の可愛さにこだわりたい!」ということで、銃撃戦の中を猫が駆け抜けるというアクションシーンでも本物の猫が出演している。もちろん、現場は万全の安全対策が採られており、猫も人間もケガ人は出ず。

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ただし、コスプレシーンでは珍しく撮影が難航。頭に何かつけるのを嫌がる子が多く、バンダナを巻いたりした状態で撮るのに苦労したそうだ。

そんな猫たちは、劇中のキアヌ同様、撮影現場で人間を癒す存在に。気分の沈んだ人は彼らと遊ぶことで元気をもらえたんだとか。そんな猫たちは撮影終了後、全員貰い手が見つかり、キャストやスタッフに引き取られた。監督も撮影現場で猫たちと過ごした後に一人の家に帰るのが寂しくなってサバ猫を飼い始めたそうで、観客だけでなく現場の全員もメロメロにしてしまったのだった。


レオ、トニック、JD(『ペット・セメタリー』のチャーチ役)

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今年1月下旬に封切られたスティーヴン・キング原作のホラー映画『ペット・セメタリー』では、トラックにはねられて死んでしまったはずが別人のようになって戻ってくるチャーチ役のレオ、トニック、JDという3匹の演技が話題に。「死から蘇る前と後の目の違いが凄い!」「本物の俳優」「あの演技はオスカーに値する!」などと評判になるほどの名演を披露した秘密は、"分業"にあった。

並んでみるとかなり個性がある3匹はいずれも元は保護猫で、それぞれが見つめること、シャーッと威嚇すること、走ることといった個別のトレーニングを2ヵ月にわたって受け、シーンごとに必要な演技を3匹で分担。各自が得意なことをやることで、死から蘇るも別人のようになってしまった不気味な猫という設定に説得力を持たせる演技を見せた。

蘇った後のチャーチは、はねられた時の血がまだこびりついている上に一度は埋葬されたため身体全体が汚れているのだが、そのためにレオたちは毎回、メイクアップも受けている。メインクーンはもともとおとなしいと言われるが、特にレオは辛抱強く、10分程度のメイク中も椅子の上でじっと我慢。なお、メイクの素材は、卵の白身のように万一猫が舐めてしまっても大丈夫なものが使われた。

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プロフェッショナルに徹する彼らは、演技だけでなく人間の俳優と同じくプロモーション活動にも尽力。各地の宣伝ツアーに参加したトニックはファンとの交流も楽しんでおり、同行したスタッフによれば「セレブ生活を満喫していた」とのこと。

ちなみに、同じ猫を演じた3匹だが、撮影が始まった当時に1歳になるかならないかだったトニックは若い猫らしく活発で、年上のレオはおとなしくて静かに観察するタイプといった風に、それぞれ個性が異なるという。ただ、みんな"ディーバ"であることは共通項で、現場では専用のトレーラーとお風呂が用意されていたほか、しょっちゅうプレゼントを求めていたんだとか。

もともとはチャーチをメインで演じる役はジンという子のはずだったが、トニック曰く「彼女はトレーニングに興味がなくて、家で鳥を追っかける日常へと戻っていった」ため、代わりにレオが起用されたとのこと。ちなみに、はねられる前のチャーチは、3匹の中でも特に愛らしいと言われるトニックが演じている。撮影後にそろって引き取り先が見つかったトニックレオJDはそれぞれInstagramを持っており、撮影終了後の様子を見ることができる。ただ、残念ながらレオは昨年5月、動脈血栓塞栓症によって息を引き取ってしまった。一方でトニックは『ペット・セメタリー』続編ができた場合に備えて(?)先日にはスクーターに乗る練習をするなど、日々精進しているようだ。


<その他の名優たち>

★ピーナッツ、ミシャ、チャーリー(『ミート・ザ・ペアレンツ』のミスター・ジンクス役)

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恋人との結婚を認めてもらうため相手の両親に挨拶に行ったところ、彼女の父親は頑固者の元CIAだった...というドタバタコメディ映画『ミート・ザ・ペアレンツ』。そんな父親が娘同様に可愛がっているのが愛猫のミスター・ジンクスだが、人間のトイレで用を足して自分で水を流すこともできるジンクス役のピーナッツたちはその賢さで、父親役のロバート・デ・ニーロを役柄同様に魅了。2度のアカデミー賞に輝く名優は、当初の脚本よりもジンクスの出番を増やすよう求めたのだそう。

★ティガー、ジェリー、ダリル(『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』のユリシーズ役)

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映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』で、しがないミュージシャンとともにニューヨークをさまよう猫のユリシーズを演じたのは、保護猫だったティガーたち3匹。撮影前に5週間のトレーニングを受けた彼らは、猫に慣れない主人公に適当に抱えられてもそこまで暴れず、一緒に騒々しい地下鉄にも乗れるように。

★名前不明の5匹(『サブリナ:ダーク・アドベンチャー』のセーレム役)

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1990年代後半から2000年代前半にかけてNHKで放送された『サブリナ』のリブート版である『サブリナ:ダーク・アドベンチャー』は、10代の魔女サブリナが主人公のダークファンタジードラマ。そんなサブリナと一緒に暮らしている黒猫のセーレムを演じているのは5匹の猫たちだが、サブリナ役のキーナン・シプカが猫アレルギーのため(本作をきっかけに判明)、共演シーンは残念ながらさほど多くない。しかし、喋るシーンがメインのためアニマトロクスが基本的に使用されていた『サブリナ』に比べて、本物の猫らしさを楽しむことができる。

★ジョネシー(『エイリアン』のジョーンズ役)

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リドリー・スコット監督のSFホラー映画『エイリアン』で、エイリアンに襲われた宇宙貨物船において主人公リプリーとともに生き残った猫ジョーンズを演じたジョネシー。乗組員の一人が目の前で襲われる様子を見ているシーンの表情(上記画像)は非常に緊迫感があったが、実はその時の表情は実際にはエイリアンでなくジャーマン・シェパードを目にして警戒していたものだという。7年後に公開されたジェームズ・キャメロン監督による続編『エイリアン2』にもジョーンズは出てくるが、そちらは別の猫が演じていた。ジョーンズは以降の映画シリーズやそれを元にした本でも何度か言及されており、2018年にはジョーンズを主人公にした絵本も出版された。

★リル・バブ(『メン・イン・キャット』)

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セレブ猫として知られ、たくさんの猫が出てくるコメディ映画『メン・イン・キャット』をはじめいくつかの作品に出演したリル・バブ。2011年に生まれて間もなくインターネットを通して有名になった彼女は、生まれながらにいくつかの遺伝子変異を持ち、骨折しやすくなる大理石骨病も患っていた。トレードマークである口から垂れたピンクの下は、下顎が短く歯がないため。気候変動に対する活動で、俳優で歌手のジャック・ブラック(『スクール・オブ・ロック』)とコラボしたことも話題に(下記の動画参照。二人のパフォーマンスは2:30頃から)。2019年末、寝ている時に8歳で天国へ旅立ったことが飼い主によって明かされた。


いかがだったろうか? 犬ほど多くの作品には出ていないかもしれないが、作品に彩りを添え、笑いや感動をもたらしてくれる猫アクターたちの活躍を今後も楽しんでほしい。

Photo:『キアヌ』 © 2016 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
『ティファニーで朝食を』
『ハリーとトント』 (C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』 © 2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
『ペット・セメタリー』
『ミート・ザ・ペアレンツ』 (C)GIG
『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』
『エイリアン』 (C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
Netflixオリジナルシリーズ『サブリナ:ダーク・アドベンチャー』

 

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