なぜ大学生は逮捕されたのか?

取得元:https://dogatch.jp/news/ntv/ntvtopics_73807/detail/

2018年7月、大阪。
当時21歳の大学4年生だった男性。彼は実家を出て1人暮らしをしていた。

就職活動は順調。
既に大手企業などから3つの内定をもらっていた。
母親がシングルマザーだったこともあり、アルバイトをして学費の足しにしていた。

そんな彼の人生は、ある時大きく狂わされる。
その日は、内定した企業へインターンシップに行く予定だった。

すると…目の前に現れたのは滋賀県警の刑事。
「氏名不詳者と共謀の上、詐欺をした疑いで逮捕状が出ている」と突然告げられ、
大学生の男性は詐欺の容疑で逮捕された。

そしてそのまま、大阪から滋賀県の大津北署に連行された。

かけられた嫌疑は、1年近く前のオレオレ詐欺事件。
2017年11月1日から2日の間、76歳の被害者に電話をかけ、
息子になりすまして現金800万円を騙し取った疑いがあるのだという。

実際に電話をする「かけ子」や金を受け取る「受け子」ではなく、
大学生はそれらをまとめる「指示役」だったと言うのだ。
もちろん身に覚えがないことを訴えたが、警察には全く信じてはもらえなかった。

一方その頃、警察から実家の母親へ連絡が入った。
突然の連絡に、何が何だかわからなかったという母親。
逮捕されたその日のうちに母親から連絡を受けた坂野真一弁護士が面会に訪れた。

大学生の男性は、「何かの間違い。これですぐに帰れるだろう」そう思っていた。
だがこれが、300日以上にも及ぶ長い勾留生活の始まりだった。

なぜ濡れ衣を着せられたのか?

一体、なぜ大学生は逮捕されたのか?

ある22才の男がオレオレ詐欺事件の見張り役として大学生より先に逮捕されていた。
実は、大学生の男性とその22才の男は顔見知り。

最初は友人の連れという程度だったが、少しすると金を貸してほしいと頼まれるように。
そのことでたびたび連絡を取り合うようになっていた。

その22才の男は警察でオレオレ詐欺事件の罪を認めていたが、ある検察官の指摘で突然供述を変えた。

検察官「少年や他の知人を勧誘し、彼らの日程調整をして報酬を渡していたということは詐欺グループのピラミッドの中で一番下ではないってことになるね。」

すると22歳の男はこんなことを言い出した。

22歳の男「実は…嘘ついてました。上にもう1人、指示役がいたんです」

それぞれの量刑は、事件の件数や被害額、そしてグループ内における地位などによっても大きく左右される。

22歳の男は「見張りのまとめ役」として、詐欺グループの中で重要な役割を担っていると見られたので、自分より上の人間がいると言い出したのだ。



こうして、あの大学生が疑われることとなった。
だが警察も、22歳の男の証言だけで大学生の逮捕に踏み切ることはできない。

そこで22歳の男と共に見張り役として逮捕された19歳の少年に聞くと…
その少年も話を合わせた。
こうして警察は22歳の男と少年の供述で、大学生の逮捕に踏み切っていたのだ。

逮捕から3日目の2018年8月1日。
大学生は大津地方検察庁へ送検された。

検察官は、きっと公正な調べをするだろうと思っていた…しかし、検察官も大学生の男性を犯人だと決めつけていた。

大学生は、この時初めて検察官に自分が逮捕された理由について聞いた。
すると検察官は…共犯者の供述と通話履歴、それと防犯カメラの映像だと答えた。
共犯者?通話記録に防犯カメラの映像?大学生は何が何だか分からなかった。

警察・検察のいい加減な逮捕理由

そして逮捕から22日目の8月20日。
否認し続けたが、ついに大学生の男性は起訴された。
警察・検察への不信感、苛立ちが募った。

しかし、1件目起訴のその日になんと別の詐欺容疑でも逮捕された。
起訴されたあとの、取り調べはひどいものだったという。



警察はどうしても自白させたかったと思われる。
検察官は逮捕の理由を「通話履歴と防犯カメラの映像」だと言っていたが、
それもかなりいい加減なものだった。

坂野弁護士は、検察側の証拠を副主任の永井弁護士と2人で徹底的に調べた。

すると…すぐにつじつまが合わないことが分かった。
22歳の男が“大学生から指示の電話があった”と言った時間には、
大学生の通話記録はなかったのだ。

さらに、証拠と言われた防犯カメラ映像には、大学生は全く写っていなかった。
その頃から取り調べは適当になっていく。
大学生が何も答えないからと、取り調べ中に刑事は目の前で居眠りをしていたという。
刑事を大学生の男性が起こす事もあったという。

ちゃんと取り調べをする気もない、ただただ無駄な時間だけが過ぎていく。
そんな状況にも関わらず、その後も大学生は新たに2つの詐欺事件の容疑をかけられ逮捕された。

いずれも22歳の男や少年が関わった詐欺事件だった。
大学生はこの時、就職の内定取り消しや大学の留年も覚悟した。
当たり前に来ると思っていた未来は、もろくも崩れ落ちた。

そして裁判へ…ずさんな捜査が明るみに

逮捕から5か月が経った2019年1月。
大学生は身柄を大津にある拘置所に送られた。

彼が入れられたのは、広さ3畳ほどの独房。
共犯者がいたと思われている事件だったことから、誰とも接触できないようにしたのだ。

暖房もなく、凍えるような寒さ。
さらに、受刑者の懲罰房に囲まれている厳しい環境だった。
そんな中で唯一心が休まる時間…弁護士以外は母だけが面会を許された。

この頃から大学生の男性は、検察の証拠や男達の供述調書などを坂野弁護士に届けてもらい、目を通すようになっていた。

そして、あることに気づく。
昨年11月2日に、自分が詐欺の犯人である22歳の男と連絡を取り合って事件を起こしたと警察に言われていたが、通話履歴を見ると、その日は地元の友達と遊んでいたことを思い出したのだ。

母は早速、その友人を訪ねた。
すると、友人からも一緒にバッティングセンターへ行ったという証言を得ることができた。
11月2日、犯行があったとされる時刻に大学生は確かに友達と遊んでいたのだ。
    
そして2019年5月。       
ようやく保釈が認められ、306日ぶりに外に出た。

その後、ようやく裁判が始まった。
坂野弁護士が訴えたのは、大学生の起訴理由が22歳の男と19歳の少年の供述のみだったこと。
そして、22歳の男の供述を捜査員が少年に詳細に伝えてから少年の供述をとったこと。
さらに、男らの供述が実際の通話履歴と整合しないことなどについて追及した。



2019年9月27日。
大津地裁は「男らの証言は信用性に重大な疑義がある」として無罪判決を言い渡した。

そして裁判官は、22歳の男の供述と実際の通話履歴が一致しないこと、さらに22歳の男の供述を捜査員が少年に伝えてから少年の供述をとったことは不当として警察の捜査に苦言を呈した。

検察は控訴せず、無罪が確定。逮捕から実に439日目だった。

罪のない大学生を陥れた2人。
19歳の少年は少年院に入り、22歳の男は自身の裁判で一部無罪を主張したが認められず実刑判決を受けた。

そして不当な調べをしたとされた警察・検察は共に、現在も大学生や家族に対する謝罪の言葉は一切なく、「捜査は適切であった」と主張している。

仰天ニュースは、今回の件について滋賀県警本部に取材を申し込んだが、正確な趣旨が伝わるかわからないため取材はお断りさせていただきます、という内容の回答があった。

無理な取り調べによる冤罪がなくなることを願いたい。

関連リンク
本田翼 ゴチ参戦の意気込み語る!「高校生の時していた格好」をテーマにした衣装も解説

中井貴一の母校・成蹊大学で同級生と再会!?中井貴一さん&広末涼子さんと吉祥寺ぶらり旅

おでん食べて「ビショビショ」個性的な食リポ炸裂!松たか子と広瀬すずが麻布十番ぶらり旅!

 

関連記事:

    None Found