『厨房のありす』門脇麦“ありす”が永瀬廉“倖生”に贈る「ここにいてもいい理由」

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『厨房のありす』(日本テレビ系、毎週日曜22:30~)第7話では、八重森ありす(門脇麦)と酒江倖生(永瀬廉)が互いの思いを伝え合い確認し合ったのも束の間、天国と地獄が一気にやってきた。

倖生の父・十嶋晃生(竹財輝之助)は横領犯で、その息子の倖生も窃盗犯とするSNS投稿を常連客が見つけ心配して駆け込んできたのだ。ようやく倖生も人並みの幸せを自分に許そうとした瞬間にこれだ。

「嫌なんですよ、俺のせいで人の人生邪魔しちゃうの」と、ここまできても自分のことより周囲を優先する倖生の姿に何とも言えない気持ちになる。SNS投稿を見た瞬間、彼の表情には一気に冷たさや緊張、強張りが充満し心を閉ざしたのがわかった。しかもそれは自分が傷つかないようにではなく、自分がいることで一緒にいる相手にさらなる迷惑がかからないように。自身が身を引くことで大切なありすの居場所や笑顔を守れるようにと瞬時に決断した決意の表情でもあった。倖生は「ありすのお勝手」の仕事も辞め、家も出てネットカフェ暮らしに戻る。

ありすの初恋もまたジェットコースターだ。気持ちが通じ合ったと思ったら、「あんなのは全部嘘」だと否定され、さらには心護(大森南朋)が晃生の恋人で彼の自殺に関わっており、横領についても心護に唆された結果だと全く知らなかった情報を一気に与えられてしまうのだ。さすがに情報量が多すぎる。

ただ、「心護に復讐するためにありすのところに来た」という倖生の背景を知ってもなお、ありすはそんな彼の不幸の上に自分の生活が成り立っていたのでは? と案じる。倖生が好きなメニューだと気付いた途端にそれを作れなくなってしまったり、反対に克服しようとそのメニューばかり作ってしまったり……苦手要素しかない恋活パーティーに参加しようとするも、そのどれもが結果倖生の不在を際立たせてしまう。

和紗のビッグラブがもたらす“ラブイズアクション”の連鎖



心護は学会で不在、倖生もありすの前から姿を消し一人ぼっちになってしまった傷心のありすを放っておけない三ツ沢和紗(前田敦子)の一本気でおっきな愛情が頼もしい。仕事に没頭させその忙しさで倖生のことを忘れさせようと考えた和紗は、出産間近の身体でホールの接客をすると名乗り出て店を再開させる。恋活パーティーにも連れ添って行く。そのどれもを当たり前の自身の役割として引き受け「私がいるだろ! 元気出せ」と事あるごとにそのままのありすを丸ごと包み励ます。最強で最高な親友だ。「周りに頼れる人が誰もいなくて、あんなに傷ついてんだよ。こんな時に助けられなくて何が友達だよ?」「ありすも家族だろ」と言ってのける。

和紗とありすの関係の素敵なところはまさにここにある。和紗がありすのことを一方的に手助けが必要な存在として見ているのではなく、いつの間にか気付いたら“家族”になっていたというところだろう。さらに、三ツ沢家一家が総出でありすの初恋の行方を見守っており、ちゃぶ台を囲んで繰り広げられる会話は全てがオープンであけすけだ。そして自分が大切に思う和紗にとって大事なありすのことを同じように気にかける夫・金之助(大東駿介)もまた嘘がなく人間臭くって何とも魅力的な人間だ。

ある意味、三ツ沢夫婦が途絶えてしまったかに思えた倖生とありすの繋がりを手繰り寄せた。和紗の手術中ずっと落ち着きなく元素記号一覧を口にするありすの元に駆け寄り、考えるより先に抱きしめる。「一緒にいてあげられなくてごめん。もう大丈夫だよ」と言って、心護がありすを励ます時にやるように“ベンゼン”の表情をする。“ラブイズアクション”の連鎖に泣けてしまう。

ありすの祝福が倖生の頑なだった心を溶かす 誕生日に起きた奇跡



ありすのことにこんなに一生懸命になれる倖生なのに、周囲の痛みに誰より敏感な彼なのに、自分の誕生日について「祝わなくていいよ。俺誕生日って嫌いなんだよね」と口にするのが切なすぎる。確かに、父親がゲイで世間体を気にして結婚したのだと聞けば、「カモフラージュでできた家族」で自分のことを「嘘をつく道具」と思ってしまうのかもしれない。「俺がこの世に生まれてきて幸せになった人なんていなかったんだよなって」と自分の存在自体を邪魔者と思わずにはいられなかった彼のこれまでの人生を思うと、胸が詰まる。そしてそれでも最終的には自暴自棄にはならず、誰かのせいにすることもなくいつだって踏みとどまってきた彼の気高さに思いを馳せてしまう。

ただ、きっと倖生がずっと心の奥底に沈め蓋をしていたこの本音や不安を初めて人に打ち明けることができて良かった。そのまんまの気持ちをありすに受け止めてもらえて、「私の人生にいてもらわないと困る人」だという混じりっけなしの彼女の気持ちに触れる。それはつまり「あなたの存在は私にとって特別で替えが利かない存在」だということだ。あまりに静かに涙を流す倖生がもうどこへも行ってしまいませんように。今度こそ倖生がありすやその周囲に根を張り、ここを“自分がいてもいい場所”で“自分がいなければならない場所”だと思い続けられますように。

心護も晃生のことを「子供が好きだった」と言っていたし、息子のこともその未来も愛していなければそもそも“倖生”なんて名付けたりしないだろう。しかしもはやそれを確認する術をなくしてしまった倖生が本人は無意識であってもその存在だけで十分に周囲を、人を幸せにしていることに自信を持ち、あまりに明白なこの事実を彼自身が信じられる日が来ますように。

晃生についての無念を倖生が一人で背負う必要はなくなった。ありすと一緒に対峙した心護も心を決めて真実を話し始めた。晃生の横領容疑は濡れ衣だと言うが、ありすの母親が命を落としてしまった火事とこの晃生の濡れ衣もきっとどこかで繋がっているのだろう。

文:佳香(かこ)

次回第8話は3月10日に放送される。なお現在、民放公式テレビ配信サービス「TVer」では、第1話~第3話、ダイジェスト、配信限定の「化学で簡単レシピ」なども配信中。

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