『厨房のありす』門脇麦“ありす”と永瀬廉“倖生”が交換し合う「信用」の正体、対等な関係にのみ宿る信頼とは?

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「倖生さんは誰よりも頑張っています(中略)そんな倖生さんを私は信じています。倖生さんと一緒に働けて私は幸せです。これからもずっとずっと私は倖生さんに幸せにしてもらいます」と、八重森ありす(門脇麦)が初めて酒江倖生(永瀬廉)と目を合わせたのが第2話。2月4日に放送された『厨房のありす』(日本テレビ系、毎週日曜22:30~)第3話では、そこから彼らの間に確かな“信用”が横たわっていることが描かれた。

“人を信用する”というのは自分の一部を委ねることでもあり一朝一夕にはいかない。そして互いに勇気と努力がいることでもある。“人に信用される”というのもこれと同じくだ。

「ありすのお勝手」のホール担当・三ツ沢和紗(前田敦子)がしばらく出勤できなくなるも「足手まといになりたくない」と一人ホールで奮闘する倖生。彼もありすについて「信用しても大丈夫な感じ。だから俺もその分頑張って応えないとって思ってる」と、その本音を松浦百花(大友花恋)に明かしていた。

この気持ちこそがありすが倖生のことを気に入った理由ではないだろうか。ASD(自閉スペクトラム症)のありすと一緒に働き暮らす中で、“自分の方が迷惑をかけられている”“自分が〜してあげている”と思ってしまう人も少なくないだろう。ありすが我が子と同じ保育園に通うことに難色を示していた保護者たちのように。そんな中で倖生はありすが自分に寄せてくれる信用に応えたい、向き合いたいと当たり前に思う。ありすと倖生の間にあるのは対等な関係だ。

前話で倖生はありすにどこまでも寄り添おうとする理由を聞かれ、「気持ちわかるんで。助けが必要なときに誰もそばにいてくれなかったり、辛いときに周りに味方がいないとか、そういう時の気持ちわかるんで」と答えていたが、ここからも彼がありすのことをASDという一側面では見ていないことがわかる。

そして、彼は自分がしてもらえなかったことをだからこそ周囲には自分が、自分だけでも進んでやりたいと思える人なのだ。

思えば、倖生の素性についてありすも我々もほとんど何も知らないが、すっかりもう八重森家にもお店にも馴染めているこの浸透力の高さこそ、演じる永瀬の魅力そのものだろう。

何気ない日常にあまりにもすんなり馴染みすぎていて、いきなり居ついた野良猫のように、その後ふらっと姿を消してしまわないか、なんだか心配になってしまうほどだ。お店の通帳を失くしてしまった時も自分一人で抱え込もうとするし、万引きしようとしていた空(石塚錬)をそっと制止したことであらぬ疑いをかけられそうになっても、空が不利にならぬように自然と自分が悪者になることを引き受けようとする。人を信用して裏切られたことでもあるのだろうか。あまりに自分が身代わりになることやあらぬ誤解をかけられることに抵抗がなさすぎるようにも思える。

空の子供ながらの切羽詰まった事情や、日頃ありすの唐突すぎる話を途中で遮ったり、ふざけて受け流したりすることのない倖生には抜群の安心感があるが、これももしかすると“彼が願ったのに誰も叶えてはくれなかったこと”なのかもしれない。

空の母親で店の常連の優奈(新井郁)は、義母・陽子(円城寺あや)からのプレッシャーに耐えながら、なんとか小学校受験も家事も子育ても一人で完璧にこなそうとする。しかし、無理がたたり倒れてしまった。そんな優奈に心護(大森南朋)は、自身が初めての子育てに苦戦した話を振り返り「助けてって言っていいんんだよ」と周囲に助けを求めることの必要性を伝えた。この心護の試行錯誤の末の答えは、何かと自分一人で抱え込みがちな倖生にとっても心動かされるものだったのではないだろうか。

倖生と目を合わせたありす、初めてありすの名前を呼ぶ倖生



そして、一見したところ無愛想で誤解のされやすい倖生にとっても、ありすは自分のことを色眼鏡で見ない貴重な存在なのかもしれない。

「倖生さんの名前には何が込められていますか?」
「人を幸せにして生きていってほしいって」
「すごいです。倖生さんは人を幸せにする人なんですね」

このありすの発言に「名前がそうってだけ」と受け流していた倖生だが、こんなに真っ直ぐ曇りなき眼で自分の名前の由来をなぞられたならば、そんな人間になりたい、今からでも努力したいと思うものではないだろうか。

相手の名前の由来を知ること、そして相手を名前で呼ぶこと……それは自分のことを、自身もまだ気付いていない自分を相手から見つけ出してもらえることのようにも思える。

そういえば、和紗はありすとの腐れ縁を振り返り「さすがにそこまで100%で頼られたらさぁ、こっちも100%で向き合うしかないじゃん?」「(ありすは)信頼さえしてくれればすごく素直っていうか愚直っていうか」と話していたが、ありすには小手先の嘘もお世辞もないからこそ、相手の本気を引き出す不思議な力が備わっているのかもしれない。

「逆境に負けないで」と名付けた本人こそがありすに“逆境”をもたらしかねない急展開



さて「逆境にも負けない強くて立派な女性になってほしい」という気持ちを込めて、ハワイ大学で女性初・そしてアフリカ系アメリカ人初の化学教授になったアリス・ボールから娘の名前をつけた母親・蒔子(木村多江)が突然来店。これはありすにとって招かれざる客となるのだろうか。

彼女の夫・誠士(萩原聖人)の蒔子と心護に対する二枚舌ぶりも気になるし、百花の口ぶりからして倖生の父親もまたこの五條製薬の関係者なのだろうか。

文:佳香(かこ)

次回第4話は2月11日に放送される。なお現在、民放公式テレビ配信サービス「TVer」では、第1話&第2話、ダイジェスト、配信限定の「化学で簡単レシピ」なども配信中。

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