原作は、「ひだまりが聴こえる」（文乃ゆき名義）でも人気を博した新鋭・茜田千の同名作。ある地方都市に“新婚夫婦”として引っ越してきた広瀬晃（山下さん）と桂一（鈴木さん）には、誰にも言えない大きな「秘密」があった。それは、2人は兄妹だということ。兄妹でありながら愛し合う2人と、2人の親や友達、職場や近所の人々との人間関係を描くヒューマンラブストーリーです。
“実の兄が好きな妹”という複雑な思いを抱く役に挑戦した山下さんにインタビュー。「自分の殻を破ってお芝居しないといけない」と決意して演じた晃の印象や役への向き合い方を聞きました。
演じてわかった、晃が抱く桂一への想い
――本作へ出演が決まってのお気持ちを聞かせてください。
『さらば、佳き日』は、これまで出演した中にはないテーマ性を持ち合わせていて、見る人によって受け取り方が異なる作品だと感じました。桂一と晃の兄妹愛をどういう風に感じてもらえるのか、私も正直想像がつかなくて。その部分をどれだけ丁寧に繊細に演じられるか、自分の殻を破ってお芝居しないといけないなと覚悟を持って出演を決めました。
――演じる晃の印象は？
世話好きのしっかり者で、家事も得意。一見大人びた印象を持ってしまうのですが、原作を読み進めていくうちに、すごくピュアで、良い意味で子供の部分が強い子だと感じました。その中にちょっと頑固な一面を持ち合わせていたり、でもハートはガラスのように繊細だったり。そんなギャップを大切にしながら演じました。
――演じる上で苦労した部分はありますか？
作品内に、私ひとりでは生み出せない感情表現が必要となってくるシーンがたくさん盛り込まれていました。そんな時は他キャストさんやスタッフさんの意見を聞いて、「そういう受け取り方があるんだ！」と新しい視点を見つけながら、1つひとつのシーンを丁寧に作っていきました。
――晃は、桂一のどこを好きになったと思いますか？
それについては、撮影に入る前からずっと考えていました。原作内でも「この瞬間に好きになった」という明確なタイミングは描かれていないんです。でも、監督からは「その“わからない”という感情を大事に演じてほしい」と言われました。
小さい頃からずっと一緒にいるから、晃の心が揺れ動く瞬間もずっとそばにいて、その瞬間が晃の根本的な人生の軸になっていて、「好きになった」というか「この人がいないと生きていけない」と思ったのではないでしょうか。演じていてそう感じました。
――W主演を務める鈴木さんの印象は？
兄妹役ということで、どれだけ壁を作らずにお芝居できるかがすごく重要になってくると思っていたのですが、すごく優しくて、お芝居に対して真剣に取り組んでいて、すぐに兄妹としての居心地の良い空気感を作ることができました。
――撮影現場でどのようなお話をしているのですか？
先に鈴木さんがこの作品の取材を受けたのですが、私の印象をたくさん聞かれたと言っていました。「鈴木さんの印象を聞かれたらなんて答えたら良い？」と聞いたら「紳士な人ですって言っておいて」と言われたので（笑）。鈴木さんは紳士的な方でした！
――実際に紳士的でしたか？
はい。良い感じに優しい方です（笑）。
「どんな作品でもどんな役でも、飛び込む時の気持ちは一緒」山下美月の作品へかける思い
――アイドルとして活動する山下さん。清純なイメージが強いですが、チャレンジングな役に挑む上で悩むことはありませんでしたか？
以前に同枠で出演した『じゃない方の彼女』（2021年）も既婚者を好きになる役でしたし、難しいテーマの作品に出演することが多いですね。ですが、どの作品も、演じる役自身は私の現実ではなく違う世界のお話なので、そこまで悩むことはありません。どんな作品でもどんな役でも、飛び込む時の気持ちは一緒です。役を理解することにどれだけ時間と熱量をかけられるかが大事だと思っています。
――今後、演じてみたい役はありますか？
王道の恋愛作品に出演したことがないので、いつか少女漫画原作のヒロインを演じてみたいです。
――「大きな秘密を抱えた夫婦」という点にちなみ、山下さんの秘密を教えてください。
う～ん……（長考して）……ないかもしれないです。よく「ミステリアス」と言われるのですが、実際は秘密にしておけず、何でも話してしまうんですよね（笑）。
――最後に、今後放送される話数の注目ポイントを教えてください。
ずっと一緒に過ごしてきた2人が離れ離れに暮らす中で、思いにすれ違いが生じてきます。晃は桂一を忘れて普通の人生を送ろうとしますが、桂一はそんな晃を思って過ごす……。最終話に向けて2人の距離感が縮まるのか、はたまた離れてしまうのか。是非そこに注目してください。
（取材・文・写真：米田果織）
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