同期2人の友情で実現『生ドラ!』はテレビ業界に爪痕を残せるのか

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ドラマなのに、生放送で完全ワンカット、BGMも一部生演奏、サプライズゲストやサプライズ企画も…という、無謀とも思える番組が放送されます。

勝地涼さん主演、全編生放送のスペシャルドラマ『生ドラ!東京は24時』(3月31日放送/フジテレビ)です。

放送を間近に控え、ドラマを企画した2人のプロデューサーに話を聞きました。

『生ドラ!東京は24時』は、深夜24時を過ぎた東京のカラオケ店で、翌日に仲間の結婚式を控えた小劇団のメンバーたちが織りなすシチュエーションコメディ。

番組ナビゲーターは、八嶋智人さんが務め、脚本・演出を担当するのは、新進気鋭の劇作家・奥村徹也(劇団献身)さん。本作は、全編生放送、ドラマブロックは完全ワンカットの生放送となります。

<勝地涼が全編生放送ドラマに初挑戦『生ドラ!東京は24時』>
『生ドラ!東京は24時』の(左から)勝地涼、八嶋智人 左から)勝地涼、八嶋智人
今作のプロデューサーを務めるのは、現在『ホンマでっか!?TV』などを担当している五十嵐元チーフプロデューサー(以下、五十嵐CP)と、『ミステリと言う勿れ』などのドラマを担当する草ヶ谷大輔プロデューサー(以下、草ヶ谷P)。

実は、入社同期で最初の配属部署も同じだったという2人。『生ドラ!』が生まれた経緯や、この企画への思いを聞きました。

『生ドラ!東京は24時』(関東ローカル)は、3月31日(木)24時25分より、フジテレビで放送されます。

きっかけは「演劇の面白さ、魅力を知ってもらいたい」とという思い



<五十嵐元×草ヶ谷大輔 インタビュー>

『生ドラ!東京は24時』のプロデューサー2人(左から)五十嵐元、草ヶ谷大輔 左から)五十嵐元CP、草ヶ谷大輔P
――『生ドラ!』という企画にチャレンジした経緯を教えてください。

五十嵐CP:大きくふたつの要素があるのですが、ひとつは、演劇業界で頑張っている作家さんや俳優のみなさんが、もっと多くの人の目に触れる機会を作りたいという思いです。

私自身、学生時代に劇団を立ち上げた経験があって、社会人になってからもよく劇場に足を運んでいたのですが、新型コロナウイルスの影響もあって、公演が急に中止になったり劇場そのものが閉鎖になってしまったりして…。

そんな中でも観客を減らして公演をやったり、無観客で公演をリモート配信したりして頑張っている演劇業界のみなさんの姿を見て、少しでも多くの人にこの頑張りが伝わるといいなと思いました。

もうひとつは、演劇の面白さをもっと伝えたいということです。舞台の面白さは、やはり“ライブ感”だと思っていて。最初は、配信だとあまり面白くないんじゃないかと思っていたんですが、実際に見てみると意外に“ライブ感”も伝わるんです。

これはこれで、ひとつのジャンルだなと思いましたし、情報番組や音楽番組など生放送のノウハウを培ってきたテレビでやれば、多くの方にまた違った形でお芝居の面白さを伝えられるのではと。また、新たなドラマジャンルの提案になるとも思ったんです。

私は今、バラエティ部門にいるのですが、ドラマの企画をするのは初めてだったので、同期でドラマ部門にいる草ヶ谷君に相談したところ、快く協力してくれて、正式な企画提案までこぎつけました。

――ワンカットにこだわった理由は?

五十嵐CP:カットを割ってきれいに撮ろうとすれば、それはそれで、できてしまうんです。

でも、過去の一部生放送のドラマなどを見ていて、カットを割ることで生放送感が薄れてしまうこともあるな、と感じまして。

そこで、あえて1台のカメラでワンカットという制約を持つと、より“生感”が出て、芝居の魅力を伝えられると思ったんです。

実際の舞台では、主演が話していても、観客は別のキャストを見たり、セットを見たりするものですけど、カットを割ってフォーカスを絞ると、「ここ見てください」と強調することになってしまいます。

舞台に近い形になるのはどちらだろうと考えたときに、やはり一画面にすべて映っている方がいいなと思いました。

同期からの提案でなければやっていなかった

――同期の草ケ谷さんから見て、五十嵐さんはどんな人ですか?

草ヶ谷P:演劇や舞台、ドラマなどのお芝居がすごく好きという印象ですね。五十嵐くんとは、入社1年目、一緒にドラマ部門へ配属されたのですが、2年目に彼が体調を崩し部署異動になったんです。

その後もたびたび食事に行っていたのですが、会うたびにドラマやお芝居の話になるんですよ。

ドラマの部署を出て他部署で十数年、いろいろな経験を積んでバラエティに異動してきて。バラエティの企画を考えるのかと思ったら、彼が企画してきたのがドラマの企画で。

違う部署にいながらも、自分の好きなことや、やりたいことを胸に秘めて頑張っていたことに衝撃を受けました。

――五十嵐さんにとって、やはりドラマは特別なものですか?

五十嵐CP:ドラマの部署を異動してからも、やはりお芝居やドラマへの思いは強く持っていました。

情報番組の部署が長かったのですが、その経験が今回の企画にも生きているなと。『めざましテレビ』などの生放送番組を、約10年ほど担当していたので、何が起こるかわからない生放送独特の“生感”の魅力は大好きですし、今もやっているバラエティ番組・お笑いへの思いももちろんあります。

今作は、それらが融合したかのように、すべての要素が入った企画になっていると個人的には思っています。

『生ドラ!』はフジテレビ各部門の総力戦

――『FNS歌謡祭』を担当しているスタッフも参加するそうですね。

五十嵐CP:そうですね。カメラマンさんも、役者の動きに対する対応力はすごいと思いますし、普段から生放送をやっているからこそ、見逃せない瞬間をしっかり撮ることもできると思います。

あとは音効(音響効果)さんですね。普通、ドラマの音づけは、できあがった映像に編集の中で音を乗せるというのがセオリーなんですが、今回は、お芝居を見ながら、BGMなどの再生ボタンを生で押して音を乗せることになるので、音効さんも普段、生放送をやっているチームにお願いしました。

生放送の経験があるからこそできる瞬発力や対応力もあると思いますので、そこは視聴者のみなさんにも注目していただきたいです。

草ヶ谷P:ドラマ、バラエティ、情報、音楽…まさにフジテレビの総力戦ですね。
『生ドラ!東京は24時』のプロデューサー2人(左から)草ヶ谷大輔、五十嵐元 同期ということで忌憚のない意見交換ができるという


演劇業界出身のスターとそれを追いかける若者たちのコラボ

――奥村(徹也)監督に、今作の話をしたときは、どんな反応でしたか?

五十嵐CP:最初にお話したときには「え?」という感じでした(笑)。

ただ、演劇配信が定着してきている中で、それをテレビの技術でできるというのは、奥村さんも挑戦意欲を掻(か)き立てられたようで。

「どうしてもこの作品をやりたいんです」と言って、あらすじを書いてきてくださったんです。

企画を考えてから、何人もの劇作家さんとお会いしたんですが、奥村さんの作品が、一発目を飾るに相応(ふさわ)しいと思ったんです。

今の舞台・演劇業界、夢を追いかける劇団員たちの現状を描いていて、演劇業界に元気になってもらいたい、恩返ししたい、魅力を伝えたいという趣旨とまさに合ってるなと感じました。

草ヶ谷くんも、いろいろな脚本を見る中で「やっぱり奥村さんだよ」と賛成してくれました。

――主演に勝地さん、ナビゲーターに演劇界出身の八嶋さんを起用した理由は?

草ヶ谷P:今回は、あまりテレビに慣れていない劇団員のみなさんが多く出演されるということで、主演の方は座長としてみなさんを引っ張っていただける方を考えていました。

そんな中で勝地さんは、20年以上の長いキャリアを持ち、舞台も小劇場から大きなものまで幅広く経験されているということでイメージにぴったりと考えてお願いしました。

五十嵐CP:八嶋さんは、演劇業界出身で現在も活躍されているスターなのですが、奥村さんをはじめとした劇団員のみなさんは、八嶋さんのようになるために頑張っていらっしゃいます。

また、八嶋さんは、奥村さんの大学時代の演劇サークルの先輩にあたりまして、奥村さんが「ずっとお仕事を一緒にしたいと思っていて、それを目標に頑張ってきたんです」とおっしゃっていたので、その思いも八嶋さんにお伝えしたところ、快く引き受けてくださったんです。
五十嵐CP
草ヶ谷P:舞台出身の役者さんたちが、勝地さんや八嶋さんの力を借りながら、テレビでも活躍していただきたいなと思っています。

五十嵐CP:今作は、演劇サークル出身のスターと、それを追いかける若者たちとのコラボレーションという面も楽しみなポイントですね。

一度カメラが回ってしまえば「ショー・マスト・ゴー・オン」

――本番に向けた稽古や準備は、順調に進んでいますか?

五十嵐CP:もう大変で、順調とは言えないですね(笑)。

事前に予想できていなかったことがどんどん出てきます。スタジオでやるのならば、何日も籠(こも)って練習できるんですけど、実際のカラオケ店の部屋をお借りするので、店舗にもご迷惑をおかけできません。

限られた時間の中で、演者さんはもちろん、技術や美術スタッフの練習もしないといけないので、本当に時間がないんです。

ですが、制約がある中でも、それを乗り越えてみんなで頑張ろうとしています。

草ヶ谷P:生放送ということもさることながら、ワンカットで撮影していくと、全方位見えてしまって、どうしてもカメラへの見切れ(映したくないものが映ってしまうこと)が多くなってしまうんです。

通常のドラマは、1シーンずつ撮影していくので、カメラから見えないところには荷物を置いたり、人がいたりできるんですが、それもできずワンカットで撮影する難しさを実感しています。

五十嵐CP:全編生放送のドラマは、これまで室内で行うのが主流だったのですが、今回は外にも出るんです。

この間も、リハーサルのときに大雨が降ったのですが、全員持っている傘が強風で折れたまま芝居を続けることになりました。

本番では、もう晴れてくれるように祈るしかないですし、「何も起きないでくれ、頼む」と思っています。

停電でもしたら、ザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』(TBS/※)みたいになっちゃいますからね(笑)。

(※)1984年6月16日の放送で、番組開始直後に会場の電気が落ちる停電が発生。復旧まで懐中電灯などを使って対応した。

草ヶ谷P:蝋燭と懐中電灯でね(笑)。でも、そういうこと起きてほしいなぁ…。

ドラマの完成度は、おそらく高いと思っていて、普通に見ていると、本当に生なのかわからないくらいのできになると思います。

だから僕は、逆にハプニングが起きてほしいです。うまくいくのかどうかというハラハラとしたスリルや、予想できないことが起こるというスリルも、この企画の醍醐味だと思うので。

『生ドラ!東京は24時』のプロデューサー・草ヶ谷大輔 草ヶ谷P
五十嵐CP:カメラが回ってしまえば、我々は基本的に何もすることができないので、役者さんとカメラマンさんたちスタッフにお願いするしかない、まさに「ショー・マスト・ゴー・オン」な状況になります。

あえてハプニングを起こそうとはしませんが、もし起こってしまったら、そこは役者さんたちに頑張ってもらいたいなと思っていますし、それも生の芝居の醍醐味だと思うんです。

想定していないことが起こったり、芝居をされたときにどのように合わせていくのか。

「この人すごい芝居をするな」とか「ここ、絶対アドリブだよね」とか、役者さんのすごさを感じ取っていただけたら、うれしいですね。

――生放送らしい企画もいくつか用意されているんですよね?

五十嵐CP:勝地さんに、劇中でやってほしいモノマネを視聴者の方に番組公式Twitterへ投稿していただいて、その中からひとつを実際にやっていただくことにしています。

今まで、ドラマに出ている役者さんの動きに視聴者が影響を与えることはあまりなかったと思うので、そういうところで視聴者の方とつながれるのは、生放送ドラマ特有の魅力だと思います。

あとは、当日まで出演者も知らない“隠しゲスト”の方もいらっしゃって、そこで見られる役者さんたちのリアルなリアクションなども楽しみにしていただきたいですね。

「テレビも捨てたもんじゃない」テレビマンとしての挑戦

――それでは最後に、視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

草ヶ谷P:今って、テレビの価値というものが問われている時代だと思うんです。

さまざまな配信サービスやSNSがある中、「テレビの存在価値ってなんだろう」と思うと、たとえ視聴率1%の番組だとしても、100万人と同じ時間、感動やエンターテインメントを共有できる生放送は重要だと思います。

今回の企画は、存在感や爪痕を残せると思っていますし、「テレビも捨てたもんじゃないじゃない」と思われるものを作らないといけないという、我々テレビマンの挑戦にもなります。

視聴者のみなさんには、その歴史的瞬間の目撃者になっていただきたいです。

五十嵐CP:俳優さん含めてスタッフ一同、とてもチャレンジングな企画で、みんなが「大丈夫かね、これ」と言いながらやっているんですけど、「新しいことやろう」とみんなが目標に向かって頑張っています。

劇団献身の方や、舞台で活躍されている俳優のみなさんが出演されますので、「こういう人たちが小劇場で頑張っているんだな」と感じたり、「劇場でお芝居を見てみたいな」と思ったりしていただけたら。

また、この番組をきっかけに、ぜひ新しい才能を探しに、劇場に足を運んでいただければと思っています。

取材・文:秋山隼人

<『生ドラ!東京は24時』あらすじ>

深夜24時を過ぎた、東京のとあるカラオケ店の一室。飯島(いいじま/勝地)ら、中年の男たちが集まって、何やら話し合っている。

彼らは下北沢を中心に活動していた「劇団大崎ベイビーズ」のメンバーで、かつての看板俳優の結婚式で披露する余興を練習中。

いよいよ結婚式を明日に控え、「今日は時間も遅いし、帰って体を休めよう」と腰を上げた矢先、部屋に新郎が駆け込んでくる。そして突如、「結婚をとりやめにしたい」と言い出す。

理由を尋ねると、新郎は新婦の衝撃的な過去を告白。張りつめた雰囲気の中、飯島は思う。「結婚式が中止になるということは、仕上がりきったこの余興を披露できなくなってしまう。それだけは阻止したい…!」。

劇団の元座長である飯島は、この余興に“ある特別な思い”を抱いていたのだ。必死な説得を試みる飯島。

すると、新婦がやってきて、さらに意外な真相が明らかに。さまざまな思惑が絡みあい、事態は予想外の展開に――。

<番組概要>

『生ドラ!東京は24時』

放送日時:3月31日(木) 24時25分~(関東ローカル)

出演者:

勝地涼、京典和玖、加瀬澤拓未、梅舟惟永、金丸慎太郎、納葉、田島実紘、川久保晴、善雄善雄、福井夏、平山智規

ナビゲーター:八嶋智人

生演奏:ハラミちゃん

脚本・演出:

奥村徹也(劇団献身)

テーマソング:

「Tokyo24:00」

作曲:カワイヒデヒロ(ex. fox capture plan)

プロデュース:

五十嵐元(『ホンマでっか!?TV』『アウト×デラックス』 ほか)

草ヶ谷大輔(『コンフィデンスマンJP』『ミステリと言う勿れ』 ほか)

公式HP:https://www.fujitv.co.jp/b_hp/namadrama/

公式Twitter:https://twitter.com/namadrama_tokyo/

公式Instagram:https://www.instagram.com/namadrama_tokyo/

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