『勇者ヨシヒコ魔王の城』深夜ドラマのイメージを作った型破りなドラマ!?

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新型コロナウイルスの影響で第7話が放送延期となったドラマ24の『浦安鉄筋家族』。その枠で「みんなでリクエスト!もう一度見たい!テレ東深夜ドラマアンコール」として、5月22日から再放送されているのが、『勇者ヨシヒコと魔王の城』(2011年)である。これは奇しくも『浦安』の主演・佐藤二朗も胡散臭い「仏」役としてレギュラー出演していた作品。今ではすっかり定着した「深夜ドラマ」ならではの立ち位置や、ムロツヨシ&佐藤二朗を擁する福田組による「福田雄一ワールド」などのすべての始まりも、この作品だと言えるだろう。

『勇者ヨシヒコ』シリーズを初めて観た人は、誰もが驚かされたのではないだろうか。
「勇者」の衣装などを含めたルックは、日本人の多くの人が知っている、あの有名なRPGソックリで、効果音も同じ。しかも、知らない村や街、城に行き、他人の家にいきなり入って、タンスの引き出しを開けたり、壺を割ったりして薬草などを探す例のRPGならではのおかしな設定を、主演の山田孝之、宅麻伸、木南晴夏、ムロ、佐藤らが大真面目な顔でやっていた。また、登場するモンスターも、あのRPGに登場するモノで、にもかかわらずチープなはりぼてである。

「え、これって良いの?」とまず驚き、戸惑い、そしてエンドロールでそのRPGの発売元であるスクウェア・エニックスが「協力」としてクレジットされていることに、さらにビックリ。笑いとともに、ずいぶん大胆な遊びをするものだなあと感心させられた視聴者は多いだろう。

今では「深夜ドラマ」の特徴といえば、低予算である一方、制約があまりないため、ゴールデンやプライムタイムではできない大胆なチャレンジができることという価値観が、すっかり定着した感がある。

例えば、近年では、西島秀俊×内野聖陽のW主演で安達奈緒子脚本の『きのう何食べた?』や、野木亜紀子脚本×山下敦弘監督のタッグによる『コタキ兄弟と四苦八苦』など、実力ある役者や、一流のクリエイターたちが、「自由度の高さ」が実験的な場として深夜ドラマ枠に参入している。

しかし、こうした流れが生まれてきたのは、2010年前後から。大きなきっかけとなったのは、大根仁監督がデジカメで撮影した『モテキ』(2010年)で、そのあたりから深夜ドラマに注目するクリエイターが増えてきた。

福田雄一もそんな一人で、「ドラマ24を『モテキ』の枠」と呼んでいた彼が「お金がない時には絶対にやってはいけないことをやったら良いのではないか」という思いで着目したのが「冒険モノ」だった。
そして、日本人の多くの人が知っている冒険活劇として、あのRPGがパロディのネタとして選ばれた。さらに、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』のパクリ(※某インタビューでの本人談)として、「予算の少ない冒険活劇」をタイトル画面で打ち出した。

この「低予算」を宣言するという、人を食ったような手法は、実に斬新だった。また、これが免罪符となり、チープさや大胆なパロディなど、どんなことをしても許容される土壌を自ら作る効果もあったろう。

呆れるほどにバカバカしいことを全力で突き詰めてやる福田雄一的世界観は、一つのスタンダードとなり、福田雄一が手掛ける作品だけでなく、ムロツヨシや佐藤二朗など、「福田雄一的なもの」がさまざまな作品に求められるようにもなった。

先の『浦安鉄筋家族』もまた、佐藤二朗主演であることから、脚本も演出も異なるにもかかわらず、原作を知らずに「福田雄一的なもの」として楽しんでいる視聴者が一部にいるほどである。

さて、多くの票を獲得して再放送されている『勇者ヨシヒコと魔王の城』だが、9年の時を経て改めて観ると、レギュラー陣がみんなずいぶん若いことに驚かされる。なかでも大きく変貌しているのはヨシヒコを演じる山田孝之で、Twitterにも以下のようなコメントが続出していた。

「映画の撮影でヒゲがある時期のヨシヒコじゃないからえらく若く見えるな」
「この時の山田孝之ウォーターボーイズくらい若くて細めでかっこいい 後半のヨシヒコはずっと顎青白い」
「ここしばらくガッチリした姿をしとるから、旅の始まりのすらっとしたヨシヒコが新鮮!」

また、この作品が「福田雄一作品を好きになったきっかけ」と回想する人もいれば、意外に「多分シーズン2あたりから見たから、最初は見てないんだよねぇ」などと、冒頭を初めて観る人も多数。

しかも、回を重ねるごとにふざけ具合がエスカレートしていったため、その"変化"に驚く以下のような声も多数あった。

「ヨシヒコ1話初めて見るんだけど、最初ムラサキこんなまともだったの!?!?」
「最初の方のヨシヒコこんなに聖人だったっけ?ムラサキにボロクソ言ってるイメージが強すぎる」
「勇者ヨシヒコの1話を観て『この頃はまだマトモだった』と言う視聴者毒されすぎではw控え目ではありつつも既にだいぶトンチキなヨシヒコワールドは確立されてるはずだって」

ちなみに、冒頭では、同じくテレ東ドラマ24の『きのう何食べた?』でシロさん(西島秀俊)の父親を演じた志賀廣太郎も登場。思いがけない場面での「再会」に涙する視聴者もいた。

多くの人がいま「深夜ドラマ」にイメージするモノの土台を作った、はじまりの場所『勇者ヨシヒコと魔王の城』。今改めて見返すと、さまざまな発見がありそうだ。

(文・田幸和歌子/イラスト・まつもとりえこ)

◆番組情報
『勇者ヨシヒコと魔王の城』
2020年5月29日(金)深夜0:12からテレビ東京で傑作選2話を放送
なお、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で『勇者ヨシヒコと魔王の城』『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』『勇者ヨシヒコと導かれし七人』が配信中

関連リンク
パラビ『勇者ヨシヒコと魔王の城』視聴ページ

パラビ『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』視聴ページ

パラビ『勇者ヨシヒコと導かれし七人』視聴ページ

Plus Paravi(プラスパラビ)

 

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