【あの人気俳優のブレイク前夜】第6弾:伊藤健太郎

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動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で楽しめるあの人気俳優のブレイク前夜。第6弾は、俳優・伊藤健太郎をフィーチャーする。

モデルとしてキャリアをスタートさせた伊藤健太郎が、俳優デビューを飾ったのは2014年の『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)だった。その後、2017年にオンエアされた『アシガール』(NHK総合)の麗しき若君役で女性ファンを一気に増やし、2018年、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)でさらに知名度を高めた。

21歳の誕生日を機に「健太郎」名義から本名に改名した伊藤健太郎。今ではすっかり伊藤健太郎の名前で定着しているが、ここでは「健太郎」時代のちょっと懐かしい姿にクローズアップする。

『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(2016年/TBS系)

伊藤健太郎は、いわゆる「流行りのイケメン」で消費されないタイプの俳優だ。一重瞼と厚めの涙袋にかたどられた大きな瞳には、人の心を吸い寄せる吸引力があり、着々とキャリアを積み上げながらも、どこかイノセントなあどけなさを残している。

だから、だろうか。伊藤健太郎には、初恋の匂いがする。グラウンドで友達とはしゃぐ姿を教室の窓からそっと見つめ続けていたような、記憶の中に眠る淡い原体験を、伊藤健太郎は思い起こさせてくれるのだ。

そんな伊藤健太郎の稀有な魅力に気づかせてくれたのが、この『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』だ。主人公は、美貌も社会的成功も手にした才色兼備の美容皮膚科医・橘みやび(中谷美紀)。「高嶺の花」ともてはやされた栄華が忘れられず、今もその気になったらすぐに結婚できると高を括っていたものの、婚活市場の前に立ちはだかる年齢という壁には勝てず、39歳のみやびは気づけば男性から敬遠される存在になっていた。本作は、そんなみやびが和風割烹料理店「とくら」の店主・十倉誠司(藤木直人)の毒舌指南を受けながら、幸せな結婚に向けて奮闘する姿を描いた恋愛スパルタコメディだ。

伊藤健太郎が演じるのは、みやびの元クラスメイトであり、片想いの相手だった桜井洋介(徳井義実)の高校時代。松井珠理奈演じる高校時代のみやびとの甘酸っぱい青春の記憶がドラマの見どころのひとつとなっている。

一緒に授業を抜け出して校門を飛び越えたり、校内を自転車でふたり乗りしたり。毎回繰り広げられる回想シーンは、少女漫画のようなときめきのオンパレード。しかもそれをスピッツの『空も飛べるはず』やMr.Childrenの『抱きしめたい』などオンエア当時にアラフォーだった世代にはたまらない選曲に乗せて演じてくれるので、心は一気にあの頃へタイムスリップ。

特に胸がキュンとなるのが、第2話。文化祭の準備で沸く校内を、ジュースの紙パックを抱えて歩く桜井。見上げると、2階の窓辺にみやびの姿が。桜井は「橘!」と呼びかけ、1階から2階に向けて紙パックを放り投げる。西日に晒されながら、それをキャッチするみやびと、「ナイスキャッチ」と笑う桜井。「こんな青春送りたかった〜!」と画面の前で身悶えするキラッキラのシチュエーションだ。

さらに伊藤健太郎の愛らしさが爆発しているのが、第3話。とある誤解からふたりの恋は実らずじまいで終わる。失恋したと勝手に勘違いした桜井は、お好み焼き屋でヘラを片手にプリンセスプリンセスの『M』を熱唱する。キーの狂ったやけっぱちな歌いっぷりは、高校生らしい青さと痛さが全開で、こんな子がクラスにいたら間違いなく速攻で告白するのに!!と、伊藤健太郎のいなかった自分の高校時代がなんだか悲しくなってくる。

ちょっと照れ臭そうに視線をそらしたり。マジックペンを鼻と唇の間にはさんで思案したり。まだ手垢のついていない演技が、高校生の恋に絶妙なリアリティを醸し出していて、本作の伊藤健太郎は永久保存版の輝き。確かな初恋として、放送から4年経った今も桜井の面影が胸に残り続けている。

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『仰げば尊し』(2016年/TBS系)

『今日から俺は!!』の印象が強い方にとっては、伊藤健太郎=ヤンキーのイメージがあるかもしれない。けれど、伊藤健太郎の持ち味はむしろヤンキーとは真逆の、図書室の片隅、揺れるカーテンの向こう側で静かに文庫本に目を落としているような文化系男子でこそ活きると断言したい。

そんな繊細で、真面目で、ちょっと不器用な伊藤健太郎の文学性を存分に堪能できるのが、この『仰げば尊し』だ。本作は、不良だらけの問題校・美崎高校を舞台に、新しく赴任してきた元プロサックス奏者の非常勤講師・樋熊迎一(寺尾聰)が、音楽の力で生徒たちとぶつかっていく正統派学園ドラマ。その中で伊藤健太郎が演じているのは、吹奏楽部の副部長・井川宏達だ。

問題校の中では優等生組にカテゴライズされるであろう井川は、吹奏楽部に不良の青島裕人(村上虹郎)らが入ってくることに抵抗を示す。練習中も些細なことから言い合いとなり、時には取っ組み合いの喧嘩を繰り広げることも。髪を染めたり、パーマを当てたり、見た目が派手な不良グループの対比として、黒髪にベスト姿の井川のノーブルさはそこにいるだけで自然と目を引く存在となっている。

そんな井川の「主役回」と言えるのが"第4音"。合宿にやってきた吹奏楽部は、強豪校として知られる明宝高校と同じ施設で過ごすことに。明宝高校吹奏楽部には、井川の中学の同級生・小池(泉澤祐希)の姿も。小池は弱小校である美崎高校を見下し、井川に対しても露骨にバカにした態度をとってくる。小池の前ではなんとか虚勢を張りながらも、悔しさと劣等感を隠せない井川。その苛立ちから練習でも裕人らに食ってかかり、樋熊にも反抗的な態度をとる。

真面目な努力家だからこそ、一筋縄ではいかないことがある。問題がなさそうに見える生徒にも、大人には言えない家庭の事情や悩みを抱えている。不良生徒の更生に焦点が置かれた本作において、井川は「その他大勢」に括られがちな生徒の声を代弁する存在だ。不良生徒のようにわかりやすいフックがない分、ともすると埋もれがちなポジションだが、普通の人間をリアルな息遣いで演じられるのも俳優の技量。伊藤健太郎は地に足のついた演技でその片鱗を見せた。

見せ場は"第4音"のクライマックス。自分のために明宝高校に向かって抗弁をしてくれた樋熊に向けて井川は頭を下げる。そこには、物語の主役になれる俳優だけが持つ正統性ともいうべきオーラが備わっていた。

あれから4年経ち、今や伊藤健太郎は次々とドラマや映画で主演を務める俳優に成長した。ぜひこれからも井川のような悪人でも善人でもない、ごく平凡な人間を演じられる俳優として、その非凡さを発揮してほしい。

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『レンタルの恋』(2017年/TBS系)

伊藤健太郎は、可愛い。端正な長身の青年に対し、「可愛い」という言葉は必ずしも賛辞にならないことを承知した上で、それでもあえて言い切りたい。伊藤健太郎は、可愛いのだと。

その可愛さは、何も見た目の良さだけを指すものではなく、むしろ彼自身が持っているどこか力の抜けた飾らない雰囲気に由来しているものだと思う。そんな可愛さ最高潮の伊藤健太郎の頭を思い切り撫で回したくなるのが、この『レンタルの恋』だ。

本作は、"レンタル彼女"を運営する「Rental Lovers」でナンバーワンの人気を誇る高杉レミ(剛力彩芽)と、彼女に恋をした冴えない大学生・山田公介(太賀※現在、仲野太賀)によるドタバタラブコメディ。その中で伊藤健太郎は公介の親友・橘隼人を演じている。

この橘隼人というキャラクターが、何ともとぼけていて可愛らしいのだ。見た目はイケメン、実家はお金持ちというハイスペック設定ながら、本人にその自覚はなく、周りも隼人をモテキャラとして扱う様子は一切なし。むしろちょっと世間知らずで、一般常識とズレたところがあり、ヘタレでのんきな癒し系キャラだ。

そんな隼人の可愛さが炸裂するのが、第5話。公介らの通う大学でバレンタインパーティーが開かれることに。そこで行われる障害物競走で優勝すると、ベストカップルに選ばれるらしい。ただし、障害物競走の条件は男性がパートナーをお姫様抱っこすること。隼人の彼女の細井美姫(信江勇)はちょっぴりビッグサイズ。美姫をお姫様抱っこする腕力のない隼人は、パーティーに向けてレミのもとで特訓に取り組もうと奮起する。

とにかく隼人は美姫命。白のタキシードという王子様ルックで美姫がやってくるのを待ち焦がれたり、美姫の夢を叶えるために必死になってお姫様抱っこをしようとしたり。内容はバカバカしいのだけど、バカバカしいからこそ一生懸命な隼人が可愛らしく思えてくる。

また、バリバリのコメディである本作において、オチ要員的なポジションも任されており、第6話ではテレビ局のスタジオでかくれんぼをするものの、すっかりその存在を忘れられ、最後まで見つけてもらえないという悲しい扱いを受けることも。だけど、倉庫でゴリラのぬいぐるみと戯れながら、公介に見つけてもらえるのを待ち続ける隼人はちょっと卑怯なぐらいに可愛い。

伊藤健太郎は現在22歳。大人の俳優へステップアップしていく中で、きっといつかおいそれと「可愛い」と言えなくなる時期はやってくる。そんなときこそ、この『レンタルの恋』の隼人を観て叫びたい。伊藤健太郎は可愛いのだ、と......!

(文・横川良明/イラスト・月野くみ)

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