「会社の偉い人が援交男性役でドラマに…」現役テレ東社員の漫画家が明かす”伝説”

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新型コロナウイルスの対策で話題を呼んでいるテレビ東京だが、同局で働きながら2017年に漫画家になった人物がいる。現在はBSテレ東の編成局で働く真船佳奈さんだ。2017年にテレビ局で働くADのキャラ「まふねこ」をコミカルに描いた『オンエアできない! 〜女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます〜』で漫画家としてデビューし、注目を浴びた。

今年3月には続編となる『オンエアできない!Deep』(朝日新聞出版)を出版。ADだけでなく美術、アナウンサー、編成など前作よりもさらに深くテレビ局の内側を描いている。テレ東プラスでは真船さんにインタビュー取材を敢行。新作に込められた思いから、社員だからこそ分かるテレ東の面白さを聞いた。

描きたかったテレビ局の「文化祭」的ノリ


ーー前作『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます』はADの苦労を面白おかしく描いた作品でしたが、「漫画を読んでテレビの世界に入りました」というADさんに会ったそうですね。

はい、すごくドMな人だと思いました(笑)。その人以外にも、現場で名刺を渡すと「まふねこさんですよね!」と声をかけられ、漫画の感想をバーッと言われることもありました。描いた作品で誰かの人生を変えるという経験は、いちADだとなかなかないことなのですごく嬉しいです。

ーー新作『オンエアできない!Deep』はAD以外に美術、アナウンサー、編成などテレビの裏側で働く多種多様な人々の話が盛り込まれていますし、ストレートにテレビ愛が伝わる内容です。

制作部にいた頃は「番組は制作現場が作っているものだ」と思っていましたが、編成部に異動してから制作以外の多くの部署が関わって番組ができていることにやっと気付けました。外側から番組作りを見た時に「まだまだネタになる人たちがいっぱいいる」と思い、Deepシリーズで描いています。

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▲現在真船が所属する編成部の仕事についても描く

今回は現場の最前線ではなく一歩引いた目線で、それでもテレビが好きだという思いが伝えられたかなと思います。見る人によっては、ADの話だけじゃないのかとがっかりする人もいるかもしれませんが(笑)。テレビ局全体で見た時、制作局だけではなくそれぞれの部署がプライドを持って仕事をして、チーム戦で一つの番組を作っている。全員野球の文化祭みたいで楽しい世界だよ!というメッセージを描きたいと思ってました。

ーー漫画を描くにあたりテレ東局内の人を取材したそうですが、面白いと感じたのはどの部分ですか。

ページ数の関係で短くしか取り上げられなかったんですが、アナウンサーの話は面白かったです。アナウンサーという生き物にちょっと偏見があったんです。顔もいいし、人気者だし、はっきり言って同じ局員でも、全く違う世界の人だと思ってました(笑)

ーーテレビ局の人にとってもアナウンサーって別世界なんですね。

入社採用も全然別のやり方で行われていて、私たち総合職とは歩んできた道が違います。局員という名の会社員だけど半分芸能人という感じで、ちょっと気軽には話しかけづらいと思っていました。でも今回Deepシリーズを描くにあたって初めてじっくり話を聞いて、今まで持っていたイメージは偏見だったのだと思い知りました。

今回は普段スポットライトがあまり当たらない男性アナウンサーをあえて取材したんですけど、彼らなりの葛藤と努力が取材をしていて浮き彫りになりました。

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女子アナに比べ、男性アナは比較的競馬の中継とか実況など、顔が出ない裏方仕事が多い。その中で抜き出るためににデータベースを集めてとてつもなく研究したり、誰にも負けない得意分野を作るために努力を重ねているらしいんです。たまに画面に出るときには恥ずかしくない体にするためライザップに通ったり(笑)。女性アナウンサーも、司会進行はもちろん歌ったり踊ったり、他局に比べて芸達者な人が多い気がします。

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話を聞いていて、「画面を通して番組をより良くしたい、面白くしたい」という熱をすごく感じて。勝手に違う世界のキラキラした人たちだ...と思っていたけど、実は制作現場と同じ気持ちだったのだと今更ながら気づきました。むしろ、間違えたら即・放送事故になるので、常に気持ちも張り詰めていると思います。ポンコツADとは次元が違います、今は尊敬しかしません(笑)。

会社の偉い人が援助交際の男性役でドラマに...


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ーー美術さんの話も面白かったです。テレビを見ているとよく聞く仕事ですが、漫画を読んで多岐にわたる仕事だと初めて知りました。

ADはじめ制作現場のスタッフは出演者にいじられたり、若干"出役"みたいなところがあるじゃないですか。一方で美術さんは裏方中の裏方、画面に映らない存在。私も音楽番組を作っている時、美術さんと一緒にセットを考えて、夜中まで相談していたので「この人たちの話もいつか描きたい」と思ってました。

美術さんはADより訳わかんないムチャブリがくる仕事だと思うんです。「人間の臓器を用意してくれ」「何もない道路を工事現場にしてくれ」とか。私も美術さんにわけのわからない電話を死ぬほどをかけたことがあるんです。炭火で魚を焼いている映像を撮りたいけど、スタジオは火気厳禁なので火を使えない。なので「燃えているように見える炭が欲しい」と頼んだりしました。結局、自分で作ったんですけど(笑)。

ーー前作、今作とともに「テレ東はお金がない」という話が頻繁に出てきますね。

美術セットを立てられないからAD時代は自分で小道具をずっと作ってました(笑)。歌番組でおみこしを担いで歌うという時、買うお金がなかったので、自分でホームセンターで木材を買ってきて作ったこともありました。2016年とかの話です。

毎日が「ワクワクさん」みたいなもので、局内にいる時は汚れてもいいように常につなぎを着てました。他局では絶対ないと思います(笑)。

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ーー具体的にどれくらい他局と比べてお金がないんですか。

そもそも正社員の数が3分の1以下なんです。人数が少ない上に、ご存じの通りお金がない。番組によっては他局の10分の1以下の予算なんじゃないんですかね...(笑)。芸人さんのひな壇もテレ東ではあまり見たことないですし、ドラマのエキストラもうちの社員がやったりしてます。ドラマ部の偉い人が、この間は援助交際をする男性の役をやっていたり(笑)。

他局の番組を見ていても「お金がかかってる!すごい!」といちいち思いますね(笑)。最近手書き風のあえてしょぼめの小道具が流行っているんですけど、他局のものを見ると「これはうまいから美術さんが関わっているな」とわかりますし、安っぽさを出すためにお金を使っていて、さすがだな、いいなと思います。

テレ東は手作り風ではなくマジの手作りです。高級感を出そうと思って手作りしてますからね、もう訳がわからない(笑)。

20200506_mahune_08.jpg▲セットを手作りする様子。30キロのワタを梱包材に貼り付ける途方も無い作業

社員の社外活動に寛容なテレ東

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ーー今回の漫画を描き終えて、改めてテレビ東京ってどんな局だと思いますか。

最初の漫画を出版した時、社内の人の反応がすごく温かったんです。普段一緒に働いているのに「サイン書いて!」とか、「テレ東をこんなに描いてくれてありがとう」という人もいっぱいいて。この間も漫画の宣伝のチラシを社長会見で配ってくれたり(笑)。こんなに赤裸々に書いているのに応援してくれる人が多くてありがたい限りです。

社内的にすごく風通しが良い。社員が自分の名前で活動することに対してすごく寛容なのも感じます。会社によっては副業を禁止するところもある中、「社員の社外での活動が番組制作にもつながってくる」とある意味投資のように捉えて応援してくれる人が多いです。

ーーどんな人に読んでほしいですか。

老若男女、誰でも面白いと思ってもらえる作品ですが、とりわけ就活生にはぜひ読んでほしいです。テレビ局を題材に描いた作品は数多くあれど、私の漫画はギャグにしつつ嫌なところも正直に描いているので参考になると思います。何しろ、本当の実体験がほとんどなので(笑)。芸能人に会えるキラキラした華やかな世界だと思っている人こそ一回読んで欲しいですね。OB訪問で聞く話よりリアルかもしれません。

ーー漫画家として今後どうしたいですか。

今作でまふねこはディレクターになり、テレビマンとして成長していってます。もしこの漫画の続編を描くとしたら、制作以外の現場で働くまふねこの姿も描いてみたいですね。「オンエアできない!」はありがたいことにたくさんの方に読んでいただけましたが、今後は「テレ東の真船佳奈」ではなく、「真船佳奈」として作品を読んでもらえる漫画家になりたいと思っています。

最近でも旅行エッセイ・恋愛エッセイなんかを連載させていただいているのですが、美容漫画を描きたいという思いがずっとあります!AD時代の息抜きは、基礎化粧品ショッピングでした。風呂にも入ってない生活を続けていたのに...(笑)。AD以外の人生の経験も、これからどんどん描いていきたいと思っています!

●著者プロフィール
真船佳奈(まふね・かな)
2012年にテレビ東京入社。2014年に制作局へ異動、バラエティ番組や音楽番組のAD、Dを経験。
当時の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新
聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。以来、平日はテレビマン・週末は漫画家・ライ
ターという兼業生活を送る。
【著者Twitter】@mafune_kana

『オンエアできない! Deep』
著者:真船佳奈
定価:本体1000円+税
発売日:2020年3月19日(木曜日)
レーベル:ソノラマプラスコミックス
判型:A5判
ページ数:176ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4022142936

<試し読みはこちら>
http://sonorama.asahi.com/series/oa-deep.html

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