この謎が解けるか!? アガサ・クリスティー、ホームズファンに贈る極上ミステリードラマ13選 – 海外ドラマ

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"ミステリーの女王"アガサ・クリスティーの本は聖書、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲の次に読まれているという説もあれば、アーサー・コナン・ドイルによって19世紀後半に生まれた世界一有名な探偵シャーロック・ホームズの作品が100年以上経った今も何度も映像化されているように、ミステリー作品は昔から多くの人々を楽しませてきた。今も「このミステリーがすごい!」などで新しい書籍が次々と紹介されるほか、映像作品でも謎解きもの、犯罪捜査ものは定番コンテンツと化している。そこで、英国ものを中心にミステリー大好きで、小説と映像の両方をチェックしている筆者がオススメのミステリードラマをご紹介したい。

『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』

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サブタイトルが示す通り、シャーロック・ホームズのドラマ版。ホームズの映像作品は枚挙に暇がないが、本作の舞台は原作の19世紀のロンドンではなく現代のニューヨーク、さらには相棒のワトソンを男性から女性に変更しているものの、ホームズ作品の根幹はしっかりと踏襲しており、脚本のクオリティも最上級と言える。

ホームズ作品の精神を受け継いでいる点の一つは、ホームズとワトソンの間に厚い信頼関係があること。ワトソンが女性になっても安易に恋愛関係に陥らせず原作の構図を貫くことで、彼らの友情がさらに際立っている。そして、シリーズ第1話から毎回、二転三転するミステリーが展開しており、痛快な謎解きが味わえる。原作へのオマージュに満ちた要素もあれば、逆転の発想や現代的なテーマもふんだんに盛り込まれているため、シャーロキアンだけでなく幅広い層のファンが楽しめる。また、他人に対して辛辣なホームズが発する暴言の数々や、時折かける温かい言葉といった会話部分も必見で、新たなホームズ物語としてオススメだ。

『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』は、ファイナルとなるシーズン7がWOWOWプライムで放送中。シーズン1~6はAmazon Prime VideoHuluで配信中。


『キャッスル ~ミステリー作家は事件がお好き』

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こちらも一話完結型ながら謎解きの楽しさが十分に味わえる、上質のミステリー。アガサ・クリスティー作品のように人間関係がややこしい事件もあるが、関係者の相関図や事件が起きた時系列をまとめた捜査ボードが用意されているので、混乱することなく見進めることができる。捜査に当たるのが敏腕刑事ベケットと雑学の好きなミステリー作家キャッスルというバランスもいい。また、ベケットの母親の死をめぐる謎という大きな引きがあり、一話完結のミステリーを味わいながら、より大きな謎を追うことができる。

本作の特徴の一つとしては、もう一人の主人公キャッスルがミステリー作家であることからミステリー界との関係が深いこと。彼のポーカー仲間としてジェームズ・パタースンやデニス・ルヘイン、マイケル・コナリー、スティーヴン・J・キャネルが本人役で出演している点もミステリーファンなら面白いはず。また、キャッスルがベケットをモデルにして執筆したと本編で描かれている小説「ニッキー・ヒート」シリーズは実際に出版されており、ニューヨーク・タイムスでベストセラー入り。日本でも数冊刊行されているが、リチャード・キャッスル名義(実際の著者はあるミステリー作家)のこのシリーズはドラマをしのぐほどの極上ミステリー作品となっている。ドラマを楽しんだ方は、こちらを読んでみるのもいいだろう。

『キャッスル ~ミステリー作家は事件がお好き』は全8シーズンがHuluで配信中。


『主任警部モース』『刑事モース ~オックスフォード事件簿~』『オックスフォードミステリー ルイス警部』

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英国作家コリン・デクスターによるモース警部シリーズは、何本もの映像化となってミステリーファンを楽しませている。原作に最も近い『主任警部モース』は、デクスターの難解かつ時として不合理なプロットをうまくかみ砕き、あくまでファーストネームを名乗らず、クロスワードとワグナーの音楽をこよなく愛し、パブで酒を飲みながら頭を働かせるという主人公の強烈なキャラクターを前面に押し出して人気シリーズとなった。

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そんなモースの若かりし頃を描く『刑事モース ~オックスフォード事件簿~』では、同じく駆け出し時代のストレンジや検視官マックスのほか、頼れる上司のサーズデイ警部ら新キャラクターのケミストリーが抜群。事件の内容も原作を参考にしたものが多く、まだ初々しさが残るモースの姿と合わせて、原作と見比べて楽しむのもオススメだ。さらには、モース警部の忠実なる腹心ルイスを主人公にした『オックスフォードミステリー ルイス警部』も存在する。この3作すべてに原作者デクスターが度々カメオ出演しているので、ヒッチコック作品のように彼を探すのもお忘れなく。また、すべての作品の舞台であるオックスフォードの美しい風景も作品に味わいを加えている。

『主任警部モース』はDVDリリース中。
『刑事モース ~オックスフォード事件簿~』はWOWOWプライムにて2月24日(月)より最新エピソード(Case24~25)が日本初放送。過去エピソードがNHK BSプレミアムにて毎週土曜16:30より放送中のほか、Case1~13はU-NEXTで配信中。
『オックスフォードミステリー ルイス警部』はAXNミステリーにて放送中。


『デクスター ~警察官は殺人鬼』

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「デクスター」といえば、全米で大人気となったシリアルキラーのことも挙げないわけにはいかない。ジェフ・リンジーによって誕生した、人間らしい感情を持たぬものの爽やかなイケメンを装って生活し、殺人衝動を満たすために法の手を逃れた凶悪犯を始末する警察官デクスター・モーガンという個性的なキャラクターは、全8作の小説になっただけでなく、ドラマシリーズとしても8シーズン続いた。原作1作目「デクスター 幼き者への挽歌」をかなり忠実に映像化したシーズン1以外は原作から大きく離れることになったが、シーズンごとに現れる連続殺人鬼とデクスターとのシリアルキラー対決という構図は保たれている。サイコパスらしく感情が欠如している"怪物"デクスターだが、几帳面でブラックジョーク好き、そして義理の妹に頭が上がらないこともあり、愛嬌のあるキャラクターに見えてくるのが不思議だ。

犯罪者視点で描かれるということでは、「その女アレックス」「死のドレスを花婿に」などで知られるピエール・ルメートル作品好きにもオススメ。また、主人公が朝の支度をしているだけのはずなのに、なんだか殺伐とした画に見えるオープニングクレジットが好きな人なら本編もお気に召すだろう。


『デクスター ~警察官は殺人鬼』は全8シーズンがFODプレミアムにて配信中。


『コールドケース』

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事件の謎解きだけでなく、その裏にある人間ドラマも見たい人にピッタリ。迷宮入りした古い事件、時には何十年も前のものを掘り起こして調べる同作は、事件の真相に加えて、犯人が事件を起こした背景や犠牲者の抱えていた秘密や思い、事件によって遺族が受けた影響なども描かれる。また、事件当時に流行っていた音楽がふんだんに使用されており、懐かしの曲を聞いて当時を思い出すことができるほか、自分より前の世代の曲を発見する機会にもなる。エピソードによっては使用する曲をボブ・ディランのような特定のアーティストに特化したものも。また、全7シーズンにわたって捜査チームが同じ顔ぶれで、彼らのケミストリーの良さも見どころの一つ。吉田羊主演で日本版リメイクも製作された。

『コールドケース』は全7シーズンがU-NEXTにて配信中。


『埋もれる殺意』

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『コールドケース』の英国版と言える作品だが、あちらが一話完結型なのに対し、本作は各シーズンが6話構成で一つの事件を追う連続もの。それぞれの事件により多くの時間をかけることで、人間ドラマの部分が色濃くなっている。シリーズものには珍しいことに、これまでの3シーズン全話をすべて同じ監督、脚本家が担当しているおかげで、作品のトーンとクオリティが保たれている。

『埋もれる殺意』はシーズン1~2がHuluにて配信中。


『ロンドン・スパイ』

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「このミステリーがすごい!」で2009年海外部門1位となった「チャイルド44」などで知られる作家トム・ロブ・スミスが企画・脚本を担当した全5話のミニシリーズ。愛した人が無残な死体となって発見されるが、その正体はスパイだった? 死の真相をめぐり、クセのある登場人物たちの騙し合いが展開する。そのストーリーに説得力を与えるベン・ウィショー、ジム・ブロードベント、シャーロット・ランプリングら英国俳優の競演も見ものだ。もともと小説を書く前はドラマ作家だったロブ・スミスは、ライアン・マーフィー製作の『アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺』やリチャード・ギア主演の『マザー・ファーザー・サン』といったミステリードラマも手掛けている。

『ロンドン・スパイ』はNetflixにて配信中。


『ザ・ファイブ -残されたDNA-』

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ベストセラーの「唇を閉ざせ」をはじめ、いくつもの作品が映像化されているハーラン・コーベンの書き下ろし作品。20年前に行方不明になった少年のDNAが現代の殺人現場で発見される、というコーベンらしい設定が、様々な人物や複数の事件をうまく絡めながら発展し、予想外ながらも強引ではないラストへと繋がっていく。全10話なので休みの日にイッキ見するのもいいだろう。コーベン作品では、『ノー・セカンドチャンス ~身代金の罠~』『SAFE 埋もれた秘密』『ザ・ストレンジャー』などもドラマ化されている。

『ザ・ファイブ -残されたDNA-』はU-NEXTにて配信中。


『アメリカン・ゴシック ~偽りの一族~』

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一筋縄ではいかない人間ばかりが揃った資産家一族。その中に連続殺人鬼が潜んでいる?...と、いかにもミステリーらしい設定だが、シリーズ途中で迎えるどんでん返し、最後に待つ戦慄のエンディングも含めて、ジェットコースターのように全13話が一気に展開していく。『ロンドン・スパイ』のように会話で火花を散らし合うキャストたちの演技合戦も見どころ。

『アメリカン・ゴシック ~偽りの一族~』はDVDリリース中


『The Sinner -隠された理由-』

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ビーチで夫、幼い息子と一緒に楽しく過ごしていたはずの女性が、白昼堂々、ある男性に突然襲いかかって刺し殺した――劇的な幕開けのミステリーは、誰が殺したかではなく、なぜ殺したのかに焦点を当てている。アンソロジーシリーズとしてシーズン3の製作も決まっており、いずれも普通の人がなぜ凶悪犯罪に手を染めるのか、をテーマにしている重厚な作品だ。原作は、アガサ・クリスティーやスティーヴン・キングにたとえられることもあるドイツの推理小説家ペトラ・ハメスファールの小説。

『The Sinner -隠された理由-』はシーズン1~2がNetflixで配信中。


『ミステリー in パラダイス』

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容疑者たちを一堂に集めて事件の真相を解説するというアガサ・クリスティー的な形式で人気を博しているのが、今年9シーズン目に突入した英国ミステリー。謎解き役に当たる主人公は2度交代したが、カリブ海に浮かぶ架空の島を舞台にしたフォーマットは変わっていない。太陽降り注ぐ島国ゆえか登場人物が軒並みホンワカしているため、『Death In Paradise(パラダイスに死す)』という原題が示すように毎回死人が出る正統派ミステリーながら、ジメジメした雰囲気はなくカラッと見ることができる。本作のヒットを受けて、原案・脚本を担当するロバート・ソログッドがシリーズを元にした小説を4冊執筆した。

『ミステリー in パラダイス』はシーズン1~8がHuluにて配信中。


今回は謎解きの面白さに重点を置いて選出したが、いかがだったろうか? 今後もオススメ作品を見つけたら適宜追加してご紹介したい。あなたのお気に入りミステリーがあればぜひお知らせを!

Photo:『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』
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『キャッスル ~ミステリー作家は事件がお好き』
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『主任警部モース』
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『刑事モース ~オックスフォード事件簿~』
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『デクスター ~警察官は殺人鬼』
© 2006 CBS Studio Inc
『コールドケース』
© Warner Bros. Entertainment Inc.
『埋もれる殺意』
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『ロンドン・スパイ』
© BBC
『ザ・ファイブ -残されたDNA-』
©The Five Series Limited 2015
『アメリカン・ゴシック ~偽りの一族~』
© 2016 CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved.
『The Sinner -隠された理由-』
© 2016 Universal Cable Productions LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
『ミステリー in パラダイス』
© Red Planet Pictures

 

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