『あしたの家族』石井ふく子Pが思う時代と家族関係の移り変わり

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2020年1月5日(日)夜9:00からTBSで宮﨑あおい、瑛太、松坂慶子、松重豊らほかが出演する新春ドラマ特別企画『あしたの家族』が放送される。人気ドラマシリーズ橋田壽賀子ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』の石井ふく子がプロデューサーを務め、脚本を手掛けるのは浪江裕史。新年にふさわしい、あしたに希望を感じられるような家族の物語となっている。今回、これまで数々の家族の物語を描いてきた石井Pにインタビューし、本作を制作することになったきっかけや出演者の印象、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも配信している『渡る世間は鬼ばかり』など過去作品に寄せる思いなどを聞いた。

――『あしたの家族』の企画はどのように始まったのでしょうか?

脚本家の浪江裕史さんがお書きになった落語が原案なのですが、それは二世帯住宅のお話で最近こういうお話を書かれる方は中々いないので面白いなと思ったんです。それで早速浪江さんにお会いしてドラマのあらすじを書いていただくように相談しました。そのあらすじと共に企画を出したらすぐに通ったのでそこから脚本を書き始めていただいたのです。

今の時代、いろんな家族がありますよね。最近は結婚して家族が離れてしまうことが多いので、この家族はこれから二世帯住宅でどう生きていくのか、他人が入ってくる家族がどうやって生活できるのかを想像させるような話をやってみたいと思いました。

――今回、特にこだわって描かれている部分はなんでしょうか?

最終稿になるまでに9回直していただいたのですが、まず、最初の結婚式当日に主人公の結婚相手だった男性が「結婚できない」とメモを残していなくなる場面で絶対その男性を出したくないとお願いしました。出すとつまらなくなってしまうと思って。主人公とその家族を際立たせたいという思いもありました。

また、新たに主人公の相手となる男性については二世帯住宅に一緒に住むかどうかというところが大事なポイントなのですが、私は彼の生い立ちやこれまでのことがきちっと分からないといけないのではと思いその描写をもう少し広げていただくようにお願いしました。そうでないと、上司だった主人公のお父さんとの関係をちゃんと描けないのではないかと思ったのです。最初は子供が出来たから二世帯住宅に来ることになった、というストーリーでした。でもそれだと親に対して失礼な気がして、自分の中で違う形にしたいとお伝えしました。

浪江さんとは一緒にお仕事をするのは初めてだったのですが、より良いものをと思いずけずけと色々お願いしてしまいました(笑)。すごく丁寧に書いてくださいました。

――これまで数々の家族の物語を手掛けていらっしゃる石井さんですが、昭和・平成・令和と時代の変化と共に家族の形の移り変わりも感じますか?

ずいぶんと変化していますよね・・・会話が少なくなっているなと感じます。まずは会話なんですよね。「ただいま」と言うか言わないかでだいぶ違うと思うんです。今はずっとみんな機械と向き合っていますよね。昭和、平成は機械と共に家族の形も変わってきているのではないでしょうか。今は機械に頼りっきりになっている印象なので、もっと小さい頃から子供にはお父さん、お母さん、お友達と広く付き合ってほしいなと思います。

――出演者の皆さまのご印象は?

宮﨑さんとは2018年に放送された『あにいもうと』(TBS)で初めてお仕事して今回2回目なのですが、『あにいもうと』での演技が素晴らしかったのでお願いいたしました。松坂さんとはずいぶん前からお仕事していたのでぜひ今回もと。お父さんはどなたにしようか迷っていたのですが"ちょっと怖い顔してるけど清潔なイメージ"というのが松重さんに合うなと思いオファーいたしました。そしたらすぐにOKをいただけてラッキーでしたね(笑)。瑛太さんも初めてだったのですが瑛太さんからもOKを頂けて、とてもキャスティングに恵まれているなと思いました。

スタジオに入る前にリハーサルを行ったのですが、皆さんその時点できっちりとせりふを覚えていらして、役もちゃんと理解してくださっていてとても気持ちよかったです。もうすでに"家族"が存在しているなと感じました。皆さんも「家族になった」と仰っていて、私も家族の中に飛び込んだような気持ちでとても楽しかったです。

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――パラビでは石井さんが手掛けられてきた作品が多数ありますが、その作品についてもお話を伺えればと思います。まず心に響くサスペンス『隣の女』(2014年)は初のサスペンス作品ということですが、挑戦されてみていかがでしたか。

個人的に"殺人"は愛嬌がないので「愛嬌があるものが良いな」と思い、隣人との交流の中で騙されて荷物を全部持っていかれてしまう・・・という話にしました。これもちょっとしたサスペンスなんですよね。この物語の原作を書かれた作家の佐野洋先生の作品を読んで面白いなと思い、一路真輝さんと船越英一郎さん、高島礼子さん、小林稔侍さんに演じていただきました。笑いたくなるようなサスペンスを作りたかったので、とても楽しかったです。

――ありがとうございます。では『女の忠臣蔵~いのち燃ゆる時~』(1979年)という作品についても教えてください。

最初、私が戦争の経験があるので「戦争のドラマをやってほしい」と言われて・・・でも戦争というテーマはいろいろと経験しているからこそ容易にできるものではないなと思いお断りしたんです。

代わりに、戦地に行く男性を見送る女性・・・というところで共通点があると思って、女性目線の「忠臣蔵」を描こうと思いました。「忠臣蔵」は男性目線のドラマが多いのですが、その時女性がどう思ったのかなど色々調べて、劇中では家族愛、兄弟愛、恋人、夫婦など5組の関係を描きました。

盲目の姉が弟が討ち入りに行くと知り無事を願って弟の名前を紙にひたすら書く場面があるのですが、これにはモデルがいるんです。佐良直美さんのコンサートに行った時に、楽屋にご挨拶に伺ったらお母さまがずっと巻紙に佐良さんの名前を書いていらしたんです。「これは何ですか?」と聞いたら「無事に終わりますようにって思いを込めているんです」と仰っていて。これはぜひ使わせていただこうと思いました。

――現在パラビでは毎月2日に"鬼の日"として『渡る世間は鬼ばかり』シリーズを配信中です。『渡る世間は鬼ばかり』はどのように作られていったのでしょうか?

『渡る世間は鬼ばかり』は日曜劇場の単発シリーズが終わって、「1時間の連続ドラマを一年間やってほしい」とお話がありました。誰とやっても良いとのことだったので橋田壽賀子さんとやりたいと思っていました。すると上司から「一緒に旅行でも行って考えてよ」と言われたんです。「わざわざ旅行行かなくてもいいのでは」と思いながら橋田さんがバンコクに行きたいとおっしゃっていたので一緒に行きました。でも食事が合わなかったのか私、熱を出してしまったんです。橋田さんはいろんなところを回ってドラマと関係なく遊んでいらしたんですけど(笑)。4日目でなんとか橋田さんを捕まえて、連続ドラマの話を切り出しました。

その前にやっていた『ありがとう』シリーズや『肝っ玉母さん』シリーズではお父さんがいない家族を描いていたので、「サラリーマンの家族の物語をやりたい」というお話をしました。「お父さんはもうすぐ定年で、兄弟がいる家庭で・・・そういうドラマを考えてるのだけど、どう?」とお話をしている中で「全員女性がいいんじゃない?」ということになって5人姉妹にしました。それで色々設定を先に考えて東京に戻ってからストーリーを練って企画を出しました。

タイトルはとても悩みました。「渡る世間に鬼はなし」ということわざがあってそれは世の中には無慈悲な人ばかりではなく、親切な人もいるということ、という意味なのですが、それをもじって相手のことを鬼だ鬼だと思っていると自分も鬼になる、鬼じゃないと思えば自分も鬼にならない、という意味を込めて「渡る世間は鬼ばかり」にしました。

――面白いですね! 他の作品もそのようにタイトルを付けられるのでしょうか?

そうですね。タイトルは結構悩んでつけることがあります。久世光彦さんと制作した『時間ですよ』シリーズは、最初の単発ドラマの時にお風呂屋さんに取材にお伺いしたり時間をかけて本を作っていったのですが、タイトルが中々決まらず・・・。煮詰まっているところに印刷所の担当の方から「締切です」と声をかけられて「もうちょっと待ってください」と言ったら「時間ですよ!」と返されたんです。その時に「あ、これタイトルに良い!」と思いつけました(笑)。

――貴重なお話ありがとうございます。「渡る世間は鬼ばかり」は新作も放送され、長年愛されていますが、皆さまに愛される理由は何だと思いますか?

今は2時間ドラマで家族の物語が描かれていることが少ないというのもありますし、先日放送されたSPドラマでは五月(泉ピン子)と姑さんの最後の関係を描きました。2人は嫁姑としてずっと仲が悪かったのですが、キミさん(赤木春江)の四十九日法要の時に弁護士が来て、キミさんの五月さんへの思いが分かるんです。そういう今の時代でも問題になっている嫁姑をテーマにしました。オリジナルの作品なので、その時代にあったテーマをリアルタイムに描けるというのが皆さまに受け入れていただけているのかなと感じています。最近だとスマホを使う場面がありまして、使い方がよく分からなかったので私も勉強しました(笑)。

――最後に『あしたの家族』の放送を楽しみにしている視聴者へメッセージをお願いします。

この作品もタイトルに悩みました。最初は「父と娘」にしようかと思ったのですがそれだと範囲が狭いなと・・・。「あした」とつけたのは家族と言うのは明日、来年どう変わっていくか分からない、でも先を見ているので前に向かって進んでいる、という意味を込めました。新年にふさわしい前向きな作品になっていると思います。皆さんにぜひ見ていただいて、ほっとしていただけたらと思います。

◆番組情報
新春ドラマ特別企画『あしたの家族』
2020年1月5日(日) 夜9:00~10:48 TBSにて放送
放送終了後、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも配信される

(C)TBS

関連リンク
パラビ『あしたの家族』視聴ページ

パラビ「心に響くサスペンス『隣の女』」視聴ページ

パラビ『女の忠臣蔵~いのち燃ゆる時~』視聴ページ

パラビ『渡る世間は鬼ばかりシリーズ』視聴ページ

Plus Paravi(プラスパラビ)

 

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