日本酒は7色に変化する! 「熱燗の魔術師」が語る、熱燗の魔力。

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日本酒ブームといわれて久しい昨今。とりわけ底冷えのする冬場には、日本酒を温めて飲む「熱燗」で身も心もほっこりと温まりたいものだ。

数あるお酒の中でも、お燗は日本酒ならではの文化。そこで、「熱燗の魔術師」として有名な、東京・池尻大橋『えんじゃく、』の髙木晋吾さんに、燗酒の魅力と楽しみ方をレクチャーしてもらった。

元エンジニアが日本酒店をオープンしたワケ


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田園都市線・池尻大橋駅から徒歩3分。国道246号線沿いに面した飲食ビルの2階に、燗酒を中心に提供する『えんじゃく、』がオープンしたのは、2017年の夏のことだ。

店主の髙木晋吾さんはもともと電機メーカーでLSIの設計を手掛けていたというバリバリのエンジニア。飲食の世界では珍しい経歴の持ち主だが、それがなぜ、こうして日本酒の店を開業することになったのだろう?

「二十歳を過ぎてすぐに日本酒に興味を持ち始め、いろんなお酒を飲み比べたり、酒販店でアルバイトをしたりしていたんです。社会に出てからもその熱は冷めず、働きながら利酒師の資格をとったほど、このジャンルにどっぷりのめり込んでいました」

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30歳のとき、親族が営む食品会社にジョインすることになり、一度は故郷の岐阜へ戻ることになった髙木さんだが、1年後に再び上京。エンジニアの職には戻らず、今度は大好きな日本酒を仕事にしたいと考えて、渋谷の和食店で働き始めた。これが飲食業界入りのきっかけだ。

「この世界に足を踏み入れたときから、40歳までに自分の店を持ちたいと思っていました。渋谷で3年ほど修行を積み、その後は友人の店などを手伝いながら準備を進め、ちょうど40歳でこの『えんじゃく、』をオープンしたんです」

すると、髙木さんがつける燗酒は瞬く間にクチコミで広まり、『えんじゃく、』は一躍人気店に。メディアに「熱燗の魔術師」として頻繁に取り上げられ、最近では海外を含めて遠方からわざわざ足を運ぶ客も珍しくないほど話題を呼んでいる。

「熱燗の魔術師」が語る燗酒の魅力


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では、髙木さんが冷酒ではなく燗酒にこだわりを持つ理由は何か?

「世界には様々なお酒がありますが、温度まで含めて楽しめるのは日本酒だけ。寒い時期にワインを温めて飲むことはありますが、日本酒は5度刻みで呼び方が変わり、温めることを正式な文化として継承してきたお酒です。もちろん、冷やして飲むことを否定しているわけではなく、冷酒で日本酒にハマった人たちに、燗酒というさらにその先に広がる世界を楽しんでもらいたいという思いから、日々こうして燗酒を紹介しているんです」

髙木さんが言うように、ひとくちに燗酒といっても、40度前後を「ぬる燗」、45度前後を「上燗」、50度前後を「熱燗」、そして55度以上を「飛び切り燗」などと、温度帯によって名称は変わる。

逆に、5度前後の冷たい温度帯を「雪冷え」、10度前後を「花冷え」、15度前後を「涼冷え」と、冷酒にも同様に名前がつけられている。こうした風流な感性に、日本独特の文化が感じられる。

自宅でもできる美味しい燗酒のつけ方


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実際に髙木さんがつけた燗酒をいただいてみると、まず、ふわりと鼻先に漂う米の香りが実に芳醇で驚かされる。そして少し口にふくんでみると、まるで炊きたての御飯を味わっているかのような、豊かな旨味が鼻腔に広がっていく。

これはぜひ、自宅でも燗酒を楽しみたい。でも、ただ鍋にお湯を沸かして徳利を湯煎すればいいというものでもないだろう。美味しい燗酒をつけるコツは何か?

「まず、お酒を選ぶ際に、味ではなく香りを重視すべきでしょう。冷酒の場合は吟醸香と呼ばれるフルーティーな香りのするものが人気ですが、これは燗酒には不向きです。なぜなら、吟醸香の正体はカプロン酸エチルという成分で、カプロンのカプはカプリコーン(ヤギ)に由来しています。つまり本来はヤギの体臭のような生臭さを持つ成分で、これが冷酒の場合は隠れていても、温めると徐々に顔を出してくるんです」

つまり吟醸香の強いお酒ほど、燗することで生臭く、飲みにくいものになってしまう可能性がある。燗する前提で選ぶ際は、純米吟醸などの吟醸酒は避けたほうがいいわけだ。

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「また、日本酒はあらかじめ火入れをしたものと、火入れをしていない生酒に大別されます。初心者の方が自宅で気軽に楽しむなら、火入れされたタイプを選んだほうが無難です。アツアツの状態まで温度を上げてもたいてい美味しく飲めますし、そこから温度が下がっていくにつれて、味が変化していくのがわかるでしょう」

逆に、火入れをしていない生酒はセンシティブなので要注意。

「生酒を燗する場合は、高温の湯煎で一気に温度を上げるのがコツ。低温で熱すると、中途半端な温度帯が長くなるため、生臭さが出る場合があるんです」

香り重視のお酒選びと、生酒を避けること。初心者でもこの2つのポイントを押さえておけば、少しずつ冷えていく過程で7色に変化する味わいが楽しめる。さっそく自宅でチャレンジしてみてほしい。

【取材協力】
「えんじゃく、」
住所:東京都世田谷区池尻3-19-3 ベルエア2F
TEL:050-3469-7802
営業時間:月~土18:00~24:00、日・祝日16:00~24:00
定休日:不定休

※この記事内の店舗情報は、2020年1月時点のものです。最新情報をご確認の上、お出かけください。

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