『春になったら』感涙の出産シーンが教える「家族」になる方法

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タイムリミットは3カ月。それまでの間に、父は「死ぬまでにやりたいことリスト」を、娘は「結婚までにやりたいことリスト」を消化していく。『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系、毎週月曜22:00~)は、その過程から浮かび上がる父娘のドラマを描いた作品だ。

第3話にして父の「死ぬまでにやりたいことリスト」は2つも達成。一方、娘の「結婚までにやりたいことリスト」は少しずつ内容が変わっていく。上書きされたリスト。そこには、娘の切なる想いがこめられていた。

瞳も雅彦も、なんて似たもの親子なんだろう



夫婦の出会いの地である「伊豆に行く」という目標を叶えた椎名雅彦(木梨憲武)が次に取りかかったのは「遊園地ではしゃぎまくる」。瞳(奈緒)には楽しいことをしたいからと誤魔化していたけれど、雅彦が遊園地にこだわったのは、幼い瞳を連れて行くと約束した場所だったからだった。

妻に先立たれ、シングルファザーとなった雅彦。今ほど男性の育児に対する理解もなかった時代だ。男手ひとつで子を育てることがどれだけ大変だったか想像に難くない。週末に連れて行くと約束したはずの遊園地も反故にしてしまった。そして、ようやく余裕ができた頃には娘はすっかり成長し、親と遊びに行くような年齢でもなくなった。

女の子が父親を無邪気に「お父さん」と慕ってくれる時間はごくわずか。その貴重な季節に娘との約束を破ってしまった。それをずっと後悔していたから、雅彦は死ぬまでに瞳と一緒に遊園地に行きたかった。「伊豆に行く」といい、雅彦の「死ぬまでにやりたいことリスト」は瞳にしてあげたいことばかりだ。

一方、瞳はというと、ふたりで泊まった伊豆の温泉宿で「結婚までにやりたいことリスト」を書き直していた。ひとり暮らしも友人との女子旅もやめ、残された時間をできるだけ父と過ごそうと決める。川上一馬(濱田岳)との新しい家庭のために通うはずだった料理教室も、父の食事療法にあてた。瞳の「結婚までにやりたいことリスト」もまた雅彦にしてあげたいことばかりになっていく。なんて似たもの親子なんだろう。

手帳と向き合う瞳の目が涙で潤む。この作品の奈緒はひとつひとつの表情に情感がつまっていて胸を打つ。重い題材だけど、決して悲愴になりすぎず、けれども切実なリアリティも欠かさない。難しいバランスを絶妙に成立させている奈緒の力量には思わず唸ってしまう。

消そうかどうか迷って消せなかったリストの最後は、一馬との結婚。だが、最終的に瞳は一馬との結婚を一旦保留にすることを決める。遊園地からの帰り道。一馬と龍之介(石塚陸翔)と3人で歩く瞳の振り向いた先には、ひとりぼっちの父の姿があった。今、自分がすべきは、新しい家族をつくることではなく、今まで自分と一緒にいてくれた家族との時間を大切にすること。娘は、父のためにいろんなことを手放そうとしている。

それを知った雅彦は、どうするだろうか。今度は逆に娘の背中を押そうとする気もする。実際、一馬に対する態度はずいぶん軟化している。最終的に雅彦がふたりのキューピッドになる線も十分ありそうだ。と思ったら、次回予告で雅彦は岸圭吾(深澤辰哉)のことをいたく気に入っていたご様子。雅彦は、どう見ても実ることのなさそうな岸の片想いの強力な援軍となるのか……?

共に支え合うことで「家族」になっていく



そして、このドラマでは出産シーンが非常に丁寧かつ効果的に描かれていく。今回、焦点が当たったのは、母のお産に対し複雑な気持ちを抱く少女・姫野凛(泉谷星奈)。両親をとられたような寂しさに加え、お産に苦しむ母を見ていられず、凛は部屋から出ていってしまう。そんな凛に声をかけたのが、瞳だった。

たぶん瞳はどこかで凛にかつての自分を見ていたのだと思う。母が亡くなり、瞳は父の支えとなることを期待された。幼い瞳にとっては難しいことだったかもしれない。寂しい思いも何度もした。喧嘩だってたくさんしたし、ワガママもさんざん言ったかもしれない。でも、父ひとり子ひとりの家庭で、自分が父を支えるという意識が、瞳の自立心を促した。瞳にとって、家族は共に支え合うものなんだと思う。

だから、凛にも教えたかった。あなたの存在が、お母さんの支えになるのだと。瞳に心を解きほぐされた凛は、母のもとへ駆けつける。みんなで母のお産を応援する。

出産は、新しい家族の始まりの瞬間。だからこそ、母親だけが頑張るんじゃない。父親も、子どもたちも、みんなで一緒にお産を支える。そうやって「家族」になっていく。子どもが生まれたら自動的に家族になれるわけじゃない。共に支え合い助け合った経験が、「家族」にさせるのだ。『春になったら』の出産シーンには、そんなメッセージを感じる。

現時点で3話まで終了したが、どの回もクオリティが高く、死が迫る悲しみを描くのではなく、そんな中でも消えることのない人のぬくもり、いとしさ、おかしみを愛情たっぷりの目線で拾い上げていく。誠実で、優しい。だから、『春になったら』を観終わった後は、心に毛布をかけられたような気持ちになる。

どうかこのまま3月まで一歩一歩進んでいってほしい。春になったら待っているのは、どんな寒さにも負けずに咲く花のような、強くて明るい笑顔だ。

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