『泥濘の食卓』それぞれの愛と齊藤京子“深愛”の選んだ道

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12月16日に放送された土曜ナイトドラマ『泥濘の食卓』(テレビ朝日系、毎週土曜23:30~)最終話では、不倫相手の那須川夏生(吉沢悠)を愛する捻木深愛(齊藤京子)をはじめ、母の美幸(筒井真理子)や那須川家の人々、尾崎ちふゆ(原菜乃華)など、それぞれが抱える“愛”が交錯。愛憎渦巻く人間ドラマにひとつの幕が下りた。

深すぎた美幸の愛情



最終話でひときわ強く描かれていたのが、母・美幸の深愛に対する常軌を逸した愛情だ。交際相手を確かめようとスーパーに押しかけたり、深愛に家から出ないよう告げたり、証拠を探すため下着や本棚を漁ったりする姿は、過干渉な毒親そのものであった。

虚ろな目で「私は深愛のことが心配で、正しい道を踏み外さないように、可哀想な目に遭わないように、深愛を守りたいだけなのに」と深愛のパソコンを見ようとして項垂れる姿は、あまりに愛と狂気に満ちていている。暴力的な夫と義父がいる家に嫁ぎ、女手一つで働きながら娘を守ってきた美幸にとって、深愛は何よりも大切で愛おしい存在だったのだろう。

「大きな病気も怪我もしないでここまで生きてこれたのはなんでだと思う? 私が、すっごく考えた栄養バランスのいいご飯を3食作ってるから。お風呂掃除してお湯張って、石けんとかなくなったら買いに行って、それで次の日の着るもの用意して、寒くなって手がかじかんでも洗濯物お日様に干して、それから外に出て働いて、それがあんたにできるの?」

深愛が初めて自立を切り出したときの台詞からも、これまで深愛がいかに大切に育てられ、美幸がどれだけ苦労してきたのかがうかがえる。ただ、これを語る美幸が「できないでしょ」と言わんばかりの笑みを浮かべて、すがるように深愛を引き留めているのが不気味だ。

しかし、どんなにがんじがらめに縛り付けても、子供はいつか親の手を離れ、自分の人生を歩んでいく。そうでなければ、あたたかな泥濘からは一生抜け出せないのだ。

ふみこが見せた正反対の愛情と食卓



夏生の不倫を知ったふみこ(戸田菜穂)は、深愛が不倫相手と知りながら「一緒にご飯作らない?」とメールを送る。やってきた深愛に不倫を問い詰めるわけでもなく、「子供の頃に好きだったもの、一緒に作ろう?」と声をかける姿は、これまでと変わらず優しさに満ちていた。

だが、3人で食卓を囲むとふみこは「もうこの味、一人で作れそう?」と深愛に質問。「こんなにおいしく作れないです」と弱々しく答える深愛に、力強い口調できっぱり「できるよ」と告げる。それは、いつまでたっても自信が持てない深愛を肯定する、愛のこもった言葉だった。

その後、声を震わせながら発した「だから、今日で終わりね」という宣言は、ふみこが自分自身に言い聞かせるものでもあったように思う。例え不倫相手だったとしても、深愛はふみこにとって一番大変な時を助けてくれた恩人であり、気の許せる友人であり、娘のような存在だったのだろう。

「もう大丈夫。深愛ちゃんは、深愛ちゃん一人でできるんだよ」と優しく訴える姿は、過保護・過干渉の美幸とは正反対で、子供の自立を見守る母のようであった。

それぞれの愛が収束する場所



ふみこやハルキ(櫻井海音)にとって別れの場になるはずだった食卓は、ちふゆの登場によって大修羅場へと変化する。原菜乃華の迫真の演技は以前から話題となっていたが、最終話でもその狂気的な姿は健在だった。

これまでの嘘が学校にバレたちふゆは、不機嫌そうな顔でハルキの家のインターホンを連打するが、偶然帰ってきた夏生に声をかけられると表情が一変。満面の笑みで「ちょっとハルキと話してっていい?」と明るく嘘の事情を説明する。

「絶対こいつを入れるな!」と必死に叫ぶハルキの願いもむなしく、夏生を突き飛ばして家に入ってくるちふゆ。不倫を暴露し、勝ち誇ったようにいびつな笑みを浮かべるが、家の中に深愛がいるのを見つけると、「なんであんたがいんのよ! どこまで邪魔するつもり?」とキッチンの包丁を手に暴走しはじめる。「ねぇ、ねぇ、なんでこんな女かばうのよ!」と徐々に声を荒げ、大好きなハルキにすら包丁を向けるちふゆの姿は狂気そのものだ。

だが、振り下ろした刃はハルキには刺さらず、間に入った夏生の脇腹に突き刺さる。どんなにダメな不倫男であっても、夏生はとっさにハルキをかばう父親であった。

救急車に運ばれ、弱々しく「罰が当たったんだよな、こんなの僕だけでいいからさ」と告げる夏生に「そうだよ」とふみこが返して笑い合うシーンは、決して深愛が踏み込めない夫婦の絆があることがわかる。

しかも、2人は救急車越しに「バイバイ」と深愛に別れを告げる。なんと残酷な展開だろうか。深愛の優しさが生んだ数々の行動が、結果として2人が泥濘から抜け出すきっかけとなり、絆をより強固なものにしたのである。

しかし、愛してくれた母のもとを去り、愛する人たちから別れを告げられたことで、深愛はようやく呪縛から解き放たれたようにも思う。自分を抱きしめられるようになった深愛が、この先自分を愛し、自分の人生を歩んでくれることを願いたい。

(文:天野スズ)

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