『あなたがしてくれなくても』理解されるべき永山瑛太“陽一”と田中みな実“楓”の拒否する側の気持ち 分岐点となる1回目のキス

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「セックスって、そんなに大事?」。4月27日放送の『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系、毎週木曜22:00~)第3話では、拒否する側の心情や葛藤が中心に描かれた。する側とされる側、どちらがいけないとか、どちらがつらいかという二分化では本来語ってはいけないのが夫婦のセックスレス問題。

レスだとしても愛情を通わせ合っていた吉野みち(奈緒)と陽一(永山瑛太)、新名誠(岩田剛典)と楓(田中みな実)、それぞれの夫婦の関係性は徐々にほころびを見せ始めて……。

「セックスレス」拒否する側の言い分



第1話からみちと新名、レス“される”側の気持ち軸をメインに展開していた本作だけど、“する”側にもそれぞれに理由がある。3話は陽一と楓の「セックス不要論」が心の声として語られた。

陽一はみちを愛しているし、大切に思っている。裸にならなくてもセックスしなくても、つながっていると実感しているしそれで満足している。

冒頭の陽一の「ごめん」の言葉では、みちとの夜の営みがうまくできなかったことが示唆されていた。よく聞く話では、セックスが「子作り」を意識した行為になった瞬間に、自分が求められているわけではなく、手段としてやらされていると感じたり、精神的負担がかかったりすることで「妻だけED」になる夫はそれなりに多いらしい(もちろんほかにも理由はたくさんある)。

陽一本人も「妻だけED」なのではないかと自分に自信がもてなくなっていた。前回、三島結衣花(さとうほなみ)とのキス展開が起きてしまったけど、それは自分の性的欲求のなさやED疑惑を別の相手で確かめたかったのかもしれない(クリニックに行ってくれ……)。

一方で楓の問題は切実だった。「セックスが疲れるものになったのはいつからだろう」という台詞にそれが凝縮されていた。労働環境とセックスレスは、実際に大きく結びついているから。どちらか一人が長時間労働や仕事のストレスを抱えている場合、レスになる確率はものすごく高くなる。

現実の日本の働き方を考えると、まだ仕事の強い影響下に多くいるのは男性側のように思う。もちろん女性の社会進出が当たり前の今、リスクは両性にある。まして共働きのカップルであれば、お互いが仕事で疲弊しすぎてしまうことで、セックスを楽しむという気持ちにより向かわなくなるのも無理がない。

今作においては、新名はノー残業デーを実施するなどホワイトな働き方をしているものの、楓が激務に追われている。働いている時間という量もそうだし、労働の質もセックスレスには影を落とす要因になりうる。楓は仕事へのリソースを割きすぎていて余裕がなく、ワーカホリック気味の傾向があるため、どうしても私生活はおざなりになってしまっていた。

本人は自分の選んだ道であり、これが夢であると思っているかもしれないけど、これは個人の問題というより、社会の問題でもあると思う。こんな働き方をしていたら、いつか倒れてしまう。

ただ楓をみていて安心した部分もあった。それは女性側が望まないセックスに対してちゃんと「ノー」を言えているということ。

では改めて、レスを“する”側として楓は描かれているけど、女性がちゃんと性的な主体であるということは大切なことだと思う。いまだに性の主体は男性になりがちな社会の中で、楓のような女性像を描いてくれていることに励まされる人も多くいるだろう。

特に女性側は生殖という面で身体管理が難しい。今後のキャリア形成は、家族計画はどうするのか。自分の人生がセックスによって変わってしまうことだってあるからそこ、どうしても慎重にならざるを得ない。

陽一と楓2人のケースをみていても、「拒否する=愛情がない」というわけではなかった。それに夫婦間でも性的合意は大切なことなので、一方だけを責める問題ではない。だからこそ、それぞれの夫婦のすれ違いが切なすぎる……。

「やっぱ、1回目のキスが分岐点だと思う」



レス“される”側のみちと新名の思いはどうだろう。新名はみちに「体を重ねればそこに愛があると思っていたが、ないことに気づいてしまった」と、みちは新名に「セックスすれば満たされてると思っていたけど夫の気持ちはそこにはない気がした」と夫婦間の悩みを吐露する。

どうやらお互い、パートナーは自分に対して愛がないと思いこんでいるようだった。いや、もしかたしら恋愛に発展するであろう相手を前にして、パートナーの不満を述べることで自分の恋愛衝動を正当化している可能性も……なんてことも考えてしまった。

だってもうすでに二人の会話は湿っていて色っぽいから。大人のズル休みとして水族館デートをする距離感は、すでに上司と部下ではない。

新名はなんの気なしに「魚って泣くのかな」とつぶやいていた。以前、みちの涙をみて「彼女のその涙は、俺の中にずっと溜まっていた涙のように見えた」と心の声で語っていたこともある。新名は男性として素直に泣くことも自分に許していないようだった。

ずっと悲しい、泣きたいという気持ちを抱えながら、感情を出さずにやってきたんだろう。そのいじらしさは、みちの心もゆさぶってしまったはず。水槽の前で二人の手がふれあっていた描写はもう、決定打。その後のキス展開は不可避だった。

そして陽一と三島もついに体を重ねてしまう。それが恋愛なのか、ライトな関係なのかはまだわからない。三島が言う「やっぱ、1回目のキスが分岐点だと思う」はみちと新名の関係にもリンクする。1回こっきりで終わるか、その後に続く道を選ぶか。

どうやらもう、引き返せないところにいるのは明白だ。

(文:綿貫大介)

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