「もう～っ！ どうしてそんな薄着なのよ～っ！」と叫び、お腹を冷やすな、靴下を履け、温かい飲み物を飲め、腹巻買って来たなど、おばあちゃんのような心配事を一方的にまくしたてる雅也。「いい加減にしてください。先生、私が妊娠したと思ってますよね？」と問いただされると、正座して「はいっ」。こういうときの二人は完全に立場が逆転している。
しかし、妊娠したという勘違いから、保身に走るのではなく、頭で考えるより先に怜子の体調を心配して突っ走ってしまうところが、雅也の良いところではあるのだろう。
そこから怜子は、NYに留学するのだと話し、NYで春に行われる歴史と美術の展覧会に一緒に行きたいと言う。優柔不断な主人公が結論を出すには、結局、相手が海外留学や海外転勤で物理的に距離をとるしかないのか。終始ベタに進んできた本作は、最終回までベタだ。
一方、彼氏の誠 (豊田裕大)が怜子に告白する様子を目撃した彩菜(東野絢香)は、誠に「私と怜子、どっちが『じゃない方』なの？ 私は『じゃない方』になりたくない」と伝える。決められないけど、彩菜は特別な存在だと答える誠に「次は自分のこと、一番に好きになってくれる人と付き合うね」と別れを告げる彩菜。甘いモノが苦手でも彩菜にずっと付き合い、長電話にも付き合ってきた誠だが、口先だけのその場しのぎで彩菜を選ばなかったのは、彩菜に対する誠実さと本当の意味での優しさに気づいたのかもしれない。
母・弘子（YOU）に「良くできた美人妻と、若くてかわいい子」、どちらを選ぶのか迫られた雅也は、盆栽教室に行き、怜子になぜNY行きを急に決めたのか尋ねる。二人のシリアスなシーンは必ず雨の中というのもやっぱりベタ。
「ある人の生き方に背中を押されて。その人は鈍くさくて優柔不断で融通がきかなくて、女心が全然わかってなくて(以下略)･･･でも、そんなところが全部･･･好き」。「先生のことですよ？」と念押ししないと、わかっているのかわからないあたりも雅也らしいが、「先生は？」と尋ねられ、「好きです。けど･･･ごめん」。初めて自分から気持ちを伝えた雅也も、道ならぬ恋によって少しは成長したのだろう。
帰宅すると、家を出ていた麗（小西真奈美）が戻っていた。雅也の必死のLINE攻撃にほだされたのだった。雅也は土下座し、改めて言う。
「僕は麗ちゃんの『である方』になりたいです。すみませんでした！ 僕はまだまだ麗ちゃんの『じゃない方』かもしれないけど、頑張ります。お願いします！」
雅也は麗が元カレのことをずっと引きずっていると思い込んでいたが、麗は言う。
「（失恋後に）ベンチで何も言わずにそばにいてくれたときから、ずっと『じゃない方』じゃなくて、である方だったよ」
思えば、雅也は優柔不断で、自分の気持をちゃんと言葉にしないことが、麗とのすれ違いを生み、怜子を振り回したのだった。自分の気持ちをちゃんと言ってほしいと言われた雅也は、仲直りとして「妻の愛情エスニック料理」を久々に作ると提案する麗に、これまで言えなかった言葉を思い切って口にする。
「エスニック料理に白米は合わないと思います！」「麗ちゃんのブリ大根が食べたいです！」
そこからバーベキューで意気投合した弘子と片桐の再婚が（予想通り）描かれる。そして、NYに旅立つ直前、怜子から「初めて会った場所で待ってます」のLINEが。そわそわする雅也に麗が「どうしたいの？」と聞くと「行かせて･･･ください」、言葉にすることができるようになった雅也は、もう以前とは違う･･･はず？
初めて会った場所で「あの日、エレベーターが停電していなかったら」「でも、別の場所で会っていたかも」と思い出話をする二人だが、別れ際、怜子は同じ道で以前と同じように戻ってきて、今度は以前と反対側の頬にキスをする。
「片方だけじゃ、バランス悪いから･･･行ってきます！」
まだまだ続きがありそうな含みを持たせる「小悪魔」ぶりを最後に見せて、物語は終了。人は大きくは変わらないが、ちょっぴりは成長する。そして、ちょっぴり成長した者同士が出会えば、また別の何かが生まれるかもしれない、そんなことを感じさせるラストであった。
(文：田幸和歌子／イラスト：月野くみ)
◆放送情報
『じゃない方の彼女』
動画配信サービス「Paravi」にて全話配信中。
また、Paraviオリジナルストーリー「じゃない方の夜～恋は突然、生まれない。～」を全話独占配信中
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