「適応障害」もしも身近な人が発症したら…原因と治療法は?

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こんな症状が現れたら何科にかかればいい? 無理なくできる予防法ってあるの?――「主治医が見つかる診療所」(月曜夜7時58分から放送)は、皆さんが抱える健康や病気に関する疑問に第一線で活躍する医師たちがやさしく答える、知的エンターテイメントバラエティです。




今回、WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられたのは、同僚が「適応障害」で退職してしまったという会社員の方からの質問です。なかなか周囲の理解を得にくい「適応障害」という病気について、同番組のレギュラー・心療内科の姫野友美医師に教えていただきました。

「適応障害」と「うつ」の違いは?


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Q:20代会社員です。半年ほど前、同僚が「適応障害」で休職したのち退職してしまいました。同僚いわく上司などになかなか理解してもらえず、悩んだ末の決断だったそうです。ちょうどその後に、女優の深田恭子さんが適応障害の治療のため休養に入ったことが話題になり(現在は活動を再開)、そこでようやく深刻な状態だったのだと理解することができました。適応障害はどんなことが原因で発症するのでしょうか。また、周囲はどのような接し方をすればよいのか...姫野先生に教えていただきたいです。

―― 適応障害とはどんな病気ですか?

「適応障害は読んで字のごとく、自分が置かれた環境に対して適応できないことで起こります。要はストレスなのですが、ストレスには外からのストレスと内的なストレスがあり、外からのストレスは、仕事や学校、家庭、恋愛、経済状況など、取り巻く環境や人間関係の変化が要因になります。内的なストレスは、その人の持つストレス耐性やレジリエンス(回復力)によるものです。

最近は "繊細さん" などと呼ばれるHSP(Highly Sensitive Person)が注目されたりしていますが、同じストレスでもそれをストレスと感じやすい人とそうでない人がいて、個人によって受け止め方に差があるんですね。

育った環境などによっても、例えば、苦労を重ねてきた人たちは過去にも同じような経験をしたから、たいしたことないよねと思える一方で、順風満帆だった人に急に大きな変化が起きれば、ストレス耐性ができていないぶん、対応できなくなってしまうわけです。

だから、『これくらいのことでなんだ! 俺なんてもっと働いてきたぞ!』と上司に言われたとしても、当事者はそれほど働いた経験がないからびっくりしてしまって適応できなくなるんですね。学校などもそうですが、うまく適応したくても自分の特性に合わないところに入ってしまった...ということもあるのだと思います」。

―― どんな症状が現れるのでしょうか?

「症状としては身体的な症状と精神的な症状があります。頭痛や疲労感、食欲不振、不眠といった身体症状が多くみられます。

また極度の不安、緊張からくる手の震え、めまい、発汗、吐き気などの症状が出ることもあります。職場から電話がかかってくると動悸がする。出社しようとするとお腹が痛くなるなどもよくみられる症状です。精神症状としては、不安、抑うつ、怒り、焦燥感、無気力感などがみられます。

つまり、症状的にはうつと変わらないんですね。では適応障害とうつの違いは何かというと、適応障害の場合はストレスの原因(職場など)から心理的・物理的に距離が近いとその症状が現れるけれど、全然違うところで離れていれば症状は出ないんですね。うつの場合は職場にいても家にいてもうつ症状に変わりなく、やる気はないし、憂うつだし、不安な状態が持続します」。

周囲が理解を示すのは大切だが深入りは注意


doctor_20211107_02.jpg画像素材:PIXTA

―― 適応障害になった場合、どうすれば回復できるのでしょう?

「いったんその場を離れることが重要です。ストレスの原因を取り除けば症状はなくなるのですから、休職や休学をするというのは条件的に必要だと思います。そして、そこからどう復帰させるかというのが一番の問題ですね。症状が強く出ていて日常生活に支障がある場合には薬物治療を考えます。

自身の認知の歪み(考え方や受け止め方の癖)を知ることも大事です。ストレスに対抗できないときには認知に歪みが生じていて、例えば職場で仕事上の間違いや仕事の進め方について指摘されたことを、まるで人格否定されたように捉えてしまうんですね。人格を否定されたから私はこの場にいてはだめなんだ、やっていけない......となるわけです。

そういう場合は認知行動療法を行い、考え方や行動を変えることによってストレスに適切に対処できるようにします。逆に、物事の捉え方を変えないと、回復しても繰り返し適応障害になる可能性はあるということです」。

―― 周りの人は適応障害の人に対してどう接すればいいのでしょう?

「同僚の立場なら、よく話を聞いてあげて、『上司が言っていたのは仕事のことで、人格を否定しているのではないよ。一緒に相談しながらやってみようか?』という言葉かけはできるかもしれませんね。ただ、あまり深入りしてしまうと今度は相談に乗った側が苦しくなってしまうので、そこは注意が必要でしょう。

基本的にはいったん休職して、専門家に相談すること。自分のいる場所で使わなくていいはずのエネルギーをどんどん使っている状態ですから、そのまま頑張り続けるとエネルギーダウンしてしまいます。ひどいうつに移行することもあるので、少しでもエネルギーの放出を抑え、エネルギーを充電する治療や時間、環境を整えることが必要なのです」。

―― エネルギーを補給することも考えたほうがいいですか?

「失ったエネルギーをチャージしていかなければならないので、そのためにもしっかりと栄養を取ることは大切です。こうした症状は脳のエネルギーダウンで起こっているので、脳内ホルモンの分泌を促し、レジリエンス(回復力、立ち直る力)を高めるために、さまざまな栄養を取り入れて脳の中をエネルギー満タンの状態にしましょう。

もし自分がつらい状態に陥りそうなときも、まずは栄養をしっかり取ってエネルギーをチャージすること。そして症状が続くようであれば専門家に相談して早めに治療を開始し、うつに移行させないようにすること。適応障害に陥ったときは、逆に成長のチャンスと捉えて、問題点を1つひとつ解決していくことが重要です。

―― 姫野先生、ありがとうございました!

【参考資料(姫野友美先生・著)】
・『こころのクセを変えるコツ クヨクヨからスッキリへ―自分でできる "認知療法" エクササイズ』(大和出版/DAIWA Premium Select).

【姫野友美医師 プロフィール】
1954年 静岡県生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
九州大学医学部付属病院心療内科、Mayo clinic Emergency Room (U.S.A)Visiting Clinician、都立広尾病院、東邦大学大橋病院麻酔科、木原病院、テーオーシービル診療所などを経て、2005年ひめのともみクリニック開設、2006年日本薬科大学漢方薬学科教授就任。「女の取扱説明書」(SBクリエイティブ)、「心療内科に行く前に食事を変えなさい」(青春出版社)、「心療内科医が教える 疲れとストレスからの回復ごはん」(大和書房)など著書多数。近著に「認知症になりたくなければラーメンをやめなさい」(講談社)。

※この記事は姫野友美医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った姫野先生も出演する主治医が見つかる診療所(11月8日月曜夜8時)は【発酵食品と人気店の得する裏ワザ&キケンな病気の意外な原因解明SP】!

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今回は納豆・酢・チーズなど...発酵食品食べ方の裏ワザ4連発をご紹介。さらに、しゃぶしゃぶ食べ放題の店「しゃぶ葉」の栄養学的・医学的に最強の4大健康食材を検証する。また、名医が解決した「謎の病気の意外な原因」をドラマ仕立てのクイズで出題。さまざまな病気を立て続けに発症し、命の危機も経験した笑福亭笑瓶の壮絶病気ヒストリーなどを送る。

どうぞお楽しみに!

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