【ネタバレ】『ただ離婚してないだけ』北山宏光演じる正隆の目から涙

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主人公の柿野正隆(北山宏光・Kis-My-Ft2)と妻の雪映(中村ゆり)がようやく心を通わせ始めたところに起きてしまった不倫相手の萌(萩原みのり)の死亡事故。夫婦が久々に取り組む"共同作業"が萌の遺体を遺棄する作業だなんて・・・。

「殺人共同生活1日目」というなんともおぞましいテロップが並んだ『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京ほか)第4話。元々、実態の伴わない、全く別の方向を見ている夫婦だった2人の関係性がより異様なものにねじ曲がっていく。死してからの萌の復讐はある意味成功していると言えるだろう。

本作では初めて正隆の目からも涙が溢れた。揉み合いの末、萌を刺殺してしまった翌朝の涙は、"どうしてこんなことになってしまったんだろう"という苛立ちが滲む。自分への不甲斐なさよりも「何なんだよ、あいつ」と叫ぶ正隆の声色に表れている通り、萌への憎しみや理解できなさが勝っていたのだろう。

雪映には目の前にいる正隆の姿がどんな風に映るのだろう。これまでどんなにひどい扱いを受けても黙って彼の痛みに寄り添おうとしてきた彼女にようやく待望の妊娠が発覚した矢先に、こんなことが起き巻き込まれてしまったのだ。

正隆の嘘やクレジットカード明細などから不倫していることには気がついていても、実際にあんなにボロボロに壊れてズタボロに傷ついた萌の姿を見せつけられて、堕胎までさせていたことがわかった時。それでも尚、本当の意味では反省せずに、萌に怒りをぶつけている夫の情けなさを目の当たりにした時。"もうこの人に立ち直るきっかけは訪れないのかもしれない"と心底愛想を尽かせてしまいたくもなるだろう。

こっそり中絶手術の可能期間を調べ、我が子を授かったタイミングと萌が子を宿したタイミングがそう遠くはないことに心痛める雪映の姿がいたたまれない。クリニックでお腹の中の子が順調に育っていることを知っても素直に喜べないどころか、雪映の中でも萌の呪縛がリフレインする。そしてどこか"待望の子を授かった者同士"かつ"正隆に傷つけられた者同士"という奇妙な連携、共感さえ萌に抱いているようにも思える。

自分が邪険に扱われたって正隆が義父によってつけられた心の傷を知っているからこそ泣き喚くでも怒りをぶつけるでもなくただただ淡々と堪えてきた雪映の"物わかりの良さ""共感力の高さ"が彼女をどんどん苦しめてしまいそうで切ない。

中村ゆり演じる雪映がクリニックのベッドの上で、まぶたを震わせ泣くのを堪えていたシーンがあまりにリアルだった。"未来を宿している者"と"未来を断たれてしまった者"の対比が、お腹の中の子が育てば育つ程自身に迫ってくる業の深さに、1人で耐えている雪映は強い。

一方、正隆は萌の残像に苦しめられ、まるで亡くなる前の萌のように追い込まれどんどん目の窪みが深いものになっていく。その様子はまるで萌そのものだ。

柿野夫婦の一切会話のない食卓シーンはただただ静かで、動きもない。互いに"言いたいことも言い出せない"ヒリヒリとした緊張感がずっと立ち込めている。正隆と雪映が向き合って座るその空間から何とも逃げ出したい、もう抱えきれない空気の重さが、いたたまれなさが充満しており、観る者の心にもその重さはずっしりとのしかかってくる。そんな様子を北山宏光と中村ゆりが圧巻のお芝居で見せてくれた。

ラストは時が止まってしまったのかと一瞬見間違えてしまう程、北山のアップが流れ、正隆の頑なに閉ざされた心がようやくゆっくりと雪解けと決壊を迎えるシーンが描かれた。途中、これが現実なのか正隆の幻想なのかこちらまでわからなくなる程に引き込まれた。

正隆がようやっと自分自身の心の声に耳を傾け、長年自分で押し殺していたであろう感情と、それをそのまま外に表現し放出する表情や体の動きとの導線の連結を取り戻したようだ。子どものように声を上げ泣き出す姿に、自分自身の罪深さに対峙し後悔や懺悔の念を抱き始める様子と、それから長年蓋をしてきた正隆の元々持ち合わせていたのであろう"痛みを感じられる心"や"人間味"が少し顔を覗かせた瞬間が見られた。

最後の涙は、正隆の自分自身への不甲斐なさであり、泣きながら言った「ごめんなさい」はこれまで散々傷つけてきた萌と雪映への贖罪の気持ち、さらにはないがしろにし日々殺してきた自分自身の本心への謝罪も込められていたようも思える。

「頼む、一緒にいてくれ」もっと早くにその素直な一言が言えていたら。何なら、この一言は正隆の中で義父に社長候補を外された時から家族に対してずっとぶつけたかった一言だったのかもしれない。

第4話冒頭と最後で見せた涙の全くの異質さをここまでまざまざと言葉少なに見せつけてくれた北山の演技に引きずり込まれた回だった。正隆がどう罪と向き合い、生き直していくのか。じっくり見守りたい。

(文:佳香(かこ)/イラスト:まつもとりえこ)



【第5話(8月11日[水]放送)あらすじ】


正隆(北山宏光)は不倫相手の萌(萩原みのり)を殺したことを自覚し、涙が止まらなくなる。雪映(中村ゆり)は、そんな正隆を励ますと共に、妊娠したことを告げる。正隆と雪映の夫婦の間には、萌を殺めたことにより異質な絆が芽生える――。そんな折、萌がいなくなったことにより、騒ぎが起きていないか心配になった正隆は、様子を窺おうと客のフリをして萌が働いていたガールズバーを訪れるが――!?

◆番組情報
『ただ離婚してないだけ』
毎週水曜深夜0:00からテレビ東京ほかで放送中。※次回の放送は8月11日(水)深夜0時からの予定
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信中。

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