無敵すぎる幼馴染、ちふゆの暴走
第5話でとにかく印象に残るのは、ハルキに近寄る者を排除しようとするちふゆの言動だ。
ハルキの「好きな人いるんだ」という言葉が忘れられず、「誰だ、誰だ、誰だ、そのクソ女!」とヒステリックに声を荒げたり、ハルキが捻木深愛(齊藤京子/日向坂46)の後ろ姿を見守っているのを目にし、怒りと悲しみが混ざり合ったような表情で涙を流すなど、ちふゆはハルキに関わるあらゆる場面で、喜怒哀楽を激しく表現する。原菜乃華の迫真の演技も相まって、作中で最もインパクトのあるキャラクターと言えるだろう。
正直なところ、視聴者がこれまでちふゆに抱いていた印象は、ハルキに執着するヤバイ女だった。だが、第5話を見てみると、そのヤバさには精神的な幼さが関係しているように感じられる。
顕著なのが、ハルキが住むマンションから出てきた深愛と対峙するシーンだ。ちふゆは苛立った表情を隠しもせず、初対面の深愛に「あなた何なんですか? あなた誰なんですか?」と質問をする。道端で突然そんなことを聞くのは完全に不審者である。深愛が「え?」と聞き返すだけ優しいと思うが、相手の反応が気に入らないちふゆは「だーかーらー! 最近この辺うろうろしてますよね、何してるんですか?」と大声で詰問しはじめる。
住宅街で平然と大声を出し、一方的に“あなたの近況を知っている”と問い詰める姿からは、手段を選ばない“無敵の人”的な恐ろしさが感じられるが、言い換えれば、ちふゆの行動には計画性がない。
ハルキに近づく女を徹底的に潰したいなら、決定的な証拠を掴んでから行動するなど、もっと確実で効果的な方法があるはずだ。しかし、ちふゆは苛立ちに任せて深愛と接触し、「何してるんですか?」と単刀直入に聞いてしまう。同年代のハルキと比べても、感情のコントロールができない幼い子供のような側面があるように思えてならないのである。
明かされるちふゆの家庭事情
ちふゆの精神が幼く、感情的に行動してしまう理由。それは、身近に叱ってくれる大人がいなかったからではないだろうか。
ちふゆの家は、祖父の所有するマンションによって不労所得を得ている特殊な家庭だった。回想の中で、ちふゆは「パパが働いているのを見たことがない」と語り、食卓からも毎日豪華な食事が並ぶ、裕福な家庭であることがうかがえる。
また、父や母の食事の仕方を見ても、ちふゆの家庭はどこかいびつだ。父の皿の周りにはこぼれた米が散乱しており、母は音を立てながらフォークを皿へ突き刺す。一般的に“行儀が悪い”と怒られるようなことを、親が平然としているのだ。夕食のシーンでは、ちふゆも幼子のように下からスプーンをぎゅっと握ってご飯を食べているのが見てとれる。父の持ち方とほぼ同じだ。
おそらく礼儀作法以外の面でも、ちふゆは甘やかされて育ったのだろう。精神の幼さがハルキに執着する直接的な理由とは言えないが、自分の思い通りにならないと癇癪をおこす姿は、聞き分けのない子供そっくりだ。
子供は親を選べない。厳しすぎる家庭で育った深愛しかり、怒られない家庭で育ったちふゆしかり、家庭環境が子にもたらす悲劇の循環のようなものが、本作品にはずっと付きまとっているように感じる。
ハルキの秘めたる思いが大爆発!
悲劇の子供といえば、ハルキもその一人だ。いじめや家族の問題で苦しんできたハルキも、とうとう限界を迎える。
深愛と二人で会話をしていると、ハルキはおもむろに「早く大人になりたいんです」と切り出し、「自分のこと、誰も知っている人がいない場所に行きたい。深愛さん、一緒に行きませんか」と思い切ってプロポーズ。緊張と焦りで涙声になりながらアピールし、「もう無理なんです! 家も学校もこんなクソ田舎も全部。みんな俺を犯罪者みたいに……」とこれまで抱え続けてきた思いをとうとう打ち明ける。
涙を流しながら感情を爆発させる姿は、見ていて胸が締め付けられるシーンだ。深愛への思いに若干危うさを感じることはあれど、ハルキは相変わらず一番の被害者であった。
そんなハルキを深愛は見ていられず、「大丈夫。大丈夫だから」と抱きしめる。男性陣が勘違いするのはそういうところだと思うが、何よりこの状況をちふゆに見られたらまずい。誰もがそう思ったところで、案の定、抱き合う二人を見てヒステリックになったちふゆが登場する。しかも、カッターを振り回すちふゆをハルキが突き飛ばし、階段から落としてしまって……。
ハルキの行動は正当防衛のはずだが、この一件はちふゆがハルキを揺さぶる重要なカードとなるだろう。深愛を守ろうと体を張る姿はかっこよかったのだが、やはり報われない男だ。
さらに来週は、深愛の不倫相手である夏生(吉沢悠)の過去も明らかに。まだまだ波乱の展開は続きそうだ。
(文:天野スズ)
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