愛しくてあたたかい家族の物語『義母と娘のブルース』!ライター・横川良明が選ぶParaviおすすめの一本

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何度見ても笑ってしまう。何度見ても泣いてしまう。何度見ても登場人物みんなのことがいとおしくて仕方なくなってしまう。もしそれらが名作の条件だとしたら、『義母と娘のブルース』(TB S系)は間違いなく名作だろう。

ちゃんと心と心でぶつかり合えるから、家族なんだ

主人公はキャリアウーマンの宮本(旧姓:岩木)亜希子(綾瀬はるか)。仕事一筋の営業部長が、競合他社の営業マン・宮本良一(竹野内豊)にプロポーズされ、夫婦となったところから物語は始まる。

良一には亡き妻・愛(奥山佳恵)との間にみゆき(高校時代:上白石萌歌、少女時代:横溝菜帆)というひとり娘がいる。しかし、良一の体は病魔に蝕まれ、余命いくばくもない。最愛の娘をひとりきりにしないために、良一は亜希子に義母になってもらったのだ。

いわゆる偽装夫婦。亜希子と良一の間に、男女の愛はない。そして、亜希子とみゆきの間に血のつながりはない。世間一般の物差しで測れば、3人は家族らしくないのかもしれない。だけど、そんな3人が共に生活をしながら家族になっていく。その姿に、どんどん涙腺が緩くなる。

たとえば、第2話。亡くなった母親のことが忘れられないみゆきは、亜希子のことが受け入れられない。亜希子はなんとか心を開いてもらおうと、一緒にアニメを観たり、愛と同じ味のハンバーグをつくろうとしたりする。そんな亜希子にみゆきは「ママのコピーって、それはそれで嫌だし」と言い、良一は「履歴書にあった、ビジネスの経験を活かし、明るく楽しい家庭をつくりたいって、あれをぜひ実践してください」と声をかける。

そう言われた亜希子は、宴会仕込みの一気コールで、みゆきに苦手な人参を食べさせる。それはちっとも母親らしくない。だけど、とっても亜希子さんらしい。そして、そんな亜希子さんにみゆきは紫のカーネーションを渡す。2人がちょっと母娘らしくなった瞬間だった。

第3話では、PTAと対立した亜希子が、ひとりで運動会の運営をすることになる。亜希子の暴走によってクラスでの居場所を失ったみゆきは猛反発するが、同調圧力に屈することなく自分を貫く亜希子を見て、力を貸すことを決める。

時に反発し、時に喧嘩をし、一歩ずつ距離を縮めていく亜希子とみゆき。そんな姿を見ながら思うのだ、こんなふうにちゃんと心と心でぶつかり合いながら深めていける関係っていいな、と。そしてそれができるのが家族なんだ、と。

家族のドラマと交差する命のドラマに涙が止まらない

そんなホームドラマとしての温かさをベースにしながら、『ぎぼむす』で描かれる家族のドラマがさらに深く胸に沁み渡ってくるのは、それが期限付きだからだろう。

愛の闘病を間近で見てきた良一は、みゆきに二度と同じ思いをさせたくないと、すべての治療を拒否していた。だけど、亜希子とみゆきとの日々に幸せを感じれば感じるほど、このままずっと一緒にいたいと思うようになる。もっと生きたいと願うようになる。そんな命のドラマが、『ぎぼむす』では描かれていく。

そこで出てくるキーワードが「小さな奇跡」だった。おおらかで人のいい良一は、決して亜希子のように仕事ができるタイプではない。だけど、日常の中にあるほんの「小さな奇跡」を見つける達人だった。

「私は良一さんと結婚して、ひとつ学んだことがあります。奇跡は、わりとよく起きます」

そう亜希子は激励し、良一の闘病生活が始まる。近づいてくる死の恐怖に耐えきれず、時に亜希子に辛く当たることもあった。いつもなら大喜びしていた自動販売機の当たりに「こんなところで運を使いたくないんですよ。奇跡は、奇跡は、明日起こってほしいんですよ」と声を震わせた夜もあった。そんな良一の苦しさに、視聴者まで一緒に苦しくなる。どうかこの人を連れて行かないでほしいと神様にお願いしたくなる。

そして、その願いは届いた。奇跡は起こった。検査の結果、数値は回復。良一は退院できることとなった。このときの亜希子と良一のシーンがまた泣かせるのだ。亜希子はいつものように額が地面に埋まるくらいの深さで土下座をする。でも、この土下座はいつもと違う。普段の亜希子の土下座は謝罪や泣き落としのための必殺技だった。今回の土下座は、感謝の土下座。「ありがとうございます。ありがとうございます」と繰り返す亜希子を見て、良一も同じように「こちらこそ、ありがとうございます」と土下座をする。

こんなに泣けて、愛がいっぱいの土下座を僕は知らない。夫婦で土下座をするなんて、やっぱり亜希子も良一もちょっと変だ。でも、抱き合うよりもずっと2人らしい。だから、見ていて涙が止まらないのだ。心が温かくなるのだ。

『ぎぼむす』を観ていると、「綾瀬はるか」ではなく「亜希子さん」と呼びたくなる

『ぎぼむす』がこんなにもいとおしいのは、そのどれもが亜希子らしさや良一らしさ、みゆきらしさで溢れているからだろう。

たとえば、あるシーンで亜希子はみゆきに向かってこう言う。

「私たち、どうしましょうか。みゆきちゃん、どうしたらいいんでしょうね」
「私にはビジョンが見えません」

こんなときに、"普通"の母娘は「ビジョン」なんて言葉は使わない。だけど、普段から「スキーム」だとか「ミッション」だとかビジネス用語を多用するキャリアウーマンの亜希子だから、「ビジョン」という言葉のセレクトに余計に泣きそうになる。

ちゃんとキャラクターが立っている。「綾瀬はるか」ではなく「亜希子さん」と呼びたくなる。そういう魅力的なキャラクターばかりだから、この世界がいとしくなる。また亜希子さんに会いたくなるのだ。

そして、その願いはこのお正月に叶う。『義母と娘のブルース 2022年謹賀新年スペシャル』として、亜希子さんやみゆきが帰ってくるのだ。

実はこの記事でふれているのは、連ドラのまだ前半部分。後半からは麦田(佐藤健)というこれまたいとおしくて、あらゆる言動が麦田らしさでいっぱいのキャラが主軸に加わり、亜希子さんとみゆきの日常が色づいていく。

『ぎぼむす』というタイトルは知っているけど、実はまだ観たことがない人は、ぜひ謹賀新年スペシャルの前に連ドラを履修しておいてほしい。間違いなくこの年末は涙と笑いでいっぱいの『ぎぼむす』色に染まることだろう。

それはとっても幸せで、優しい気持ちでいっぱいになる、最高の年の瀬の過ごし方だと、いち『ぎぼむす』ファンとして断言したい。

あと、これを観ると間違いなく竹野内豊と結婚したくなるので、そのあたりはくれぐれもご注意を!

(文:横川良明)

◆番組情報
『義母と娘のブルース 2022年謹賀新年スペシャル』
2022年1月2日(日)21:00からTBS系で放送。

◆配信情報
『義母と娘のブルース』
2018年放送の連続ドラマ版全話、『義母と娘のブルース 2020年謹賀新年スペシャル』、Paraviオリジナルストーリー「義母と娘のフェルマータ」が動画配信サービス「Paravi」で配信中。

(C)TBS

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